ご成約インタビュー No.135
INTERVIEW
「温泉むすめ」で地方創生を実現
エンバウンド、M&Aで組織基盤を強化し、世界展開を目指す
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株式会社エンバウンド 代表取締役 橋本竜 氏
日本全国131の温泉地をキャラクター化し、地方創生を目指す「温泉むすめ」プロジェクト。東日本大震災を機に立ち上げられたこのプロジェクトは、8年間で着実に成長を遂げ、運営会社の株式会社エンバウンドは2024年5月には天気予報専門メディア「tenki.jp」を運営するALiNKインターネットへの株式譲渡を実施。組織基盤の強化により、さらなる飛躍を目指している。プロジェクトの立ち上げから現在に至るまでの軌跡と、M&Aによって実現した新たな成長戦略について、橋本竜代表取締役に話を聞いた。
全国131キャラクターで温泉地を活性化する独自のビジネスモデル
貴社の事業内容、特徴や強みを教えてください。

温泉むすめは、日本全国の温泉地をキャラクター化して、現在131キャラクター(インタビュー時点)が存在しています。北海道から九州まで全都道府県にキャラクターがいて、それぞれに別々の声優さんが担当しているのが特徴です。
私たちの最大の強みは、地域創生に特化したビジネスモデルです。温泉むすめのグッズは現地でしか購入できない仕組みにしており、イベントも基本的に現地開催にこだわっています。これにより、ファンの方々が実際に温泉地を訪れ、地域経済の活性化につながっています。
また、温泉地の皆様にキャラクターを活用いただく際は、ロイヤリティやキャラクター使用料をいただかないという方針を取っています。これは純粋に地域を盛り上げたいという想いからです。
東日本大震災がきっかけで始まった地方創生プロジェクト
今回のM&Aを検討されたきっかけと経緯を教えてください。
実は、温泉むすめを立ち上げたきっかけは東日本大震災でした。私は福島県出身で、震災当時はフランスにいたのですが、テレビで福島の惨状を見て、自分の好きなサブカルチャーを通して地元のために何かできないかと考えました。
帰国後、当時流行り始めていた「聖地巡礼」という現象に着目し、若い方々に温泉巡りをしていただくことで日本の観光地の魅力を知ってもらい、地方創生につなげようと考えたのです。
8年間運営してきて、地方からの引き合いも強く、「うちの温泉地もキャラクターを作ってほしい」「うちでもイベントをしてほしい」という要望をたくさんいただいていました。しかし、少人数で運営していたため、多くをお断りせざるを得ない状況でした。
各温泉地に合わせたローカライズしたコンテンツ運営は非常にカロリーがかかり、どうしてもマネジメント面がおろそかになっていました。しっかりとしたバックオフィスを含めたマネジメント体制を構築し、ファンや温泉地の要望に応えるため、M&Aを検討することにしました。
お相手に求める条件はどのようなことでしたか。
一番重要だったのは、地方創生という社会貢献性の高い事業への理解です。温泉むすめは直接的にお金に結びつくわけではありません。「社会のために、日本のために」という思いを受け取ってもらえる会社さんを探していました。
また、私たちの独自の運営スタイルを尊重してくれることも重要でした。通常のIPとは違い、全ての決定事項を私が行うことで意思統一を図り、日本全国で統一したルールで展開できているからです。
天気情報と観光の親和性に着目したシナジー効果
お相手の企業価値をどのようにご評価されていましたか。
ALiNKインターネットさんは「tenki.jp」という日本全国を対象としたサービスを運営されており、まず全国展開という点でシナジーがあると感じました。天気情報は生活に密着した、なくてはならないものです。実際、ファンの方が温泉地に行く際も、まず天候を調べますから、観光と天気の親和性は非常に高いと考えました。
また、少人数でメディアを安定運営されている点も評価しました。規模感的にも、密にコミュニケーションが取れる、ちょうどいいパートナーだと感じました。
トップ面談の印象を教えてください。
第一印象として、私たちと同じように日本全国を網羅的にカバーするサービスを展開されていることに共感を覚えました。また、新しい付加サービスを生み出せる可能性も感じました。
何より、私たちの地域ファーストの理念を理解し、今まで通りの経営スタイルを貫かせていただけるという配慮をいただけたことが大きかったです。
バックオフィス強化で新事業展開も加速
どのようなシナジーを見込んでのご決断だったのでしょうか。

まず、マネジメントと組織づくりの面で大きなシナジーがあります。現在、バックオフィス系は全てお任せできており、私たちは温泉地との対応やグッズ企画などのコアな業務に集中できるようになりました。
また、財務面での安定も大きいです。独立していた頃は、イベントごとに採算を気にしなければなりませんでしたが、今は年間を通じて長い目で考えることができるようになりました。この安心感は何にも代えがたいものです。
具体的な協業内容や今後の展望についてご教示いただけますでしょうか。
現在、新プロジェクトも含めた横展開を企画しています。バックオフィスの憂いがなくなったことで、トライアンドエラーができる環境が整いました。
温泉むすめは50年計画で運営しており、現在8年目です。今後は日本だけでなく、世界中の温泉地にも展開していきたいと考えています。インバウンドが活況な今、外国人観光客に向けて、キャラクターが代弁者となって世界中に温泉の魅力を発信し、日本中の地域が活性化していくことを目指しています。
コンテンツの長期成長を実現するM&Aという選択肢
成長戦略におけるM&Aについてどのようにお考えですか?
コンテンツは生き物であり、スピード感が重要です。自社で組織を作る場合、人の教育も必要ですし、時間がかかってしまいます。マネジメントがしっかりしていて、組織も整っている会社と一緒になることで、その部分をショートカットできると考えました。
資金調達という選択肢もありましたが、コンテンツ以外のところに時間を割かれることを避け、コンテンツづくりに集中するためにM&Aを選択しました。
貴社のM&A戦略をご教示いただけますでしょうか。
コンテンツ業界では、M&Aという選択肢を考える人はまだ少ないと思います。しかし、コンテンツを長く続けたいと考えている場合は、M&Aは検討の余地があると思います。
私たちのようなコンテンツプロデューサーは、自分が生み出したコンテンツを長くたくさんの人に愛してほしいと思っています。M&Aという選択をすることで、より多くの人の目に触れ、コンテンツが成長していけば、みんなが幸せになれると考えています。
ストライクのサービスや担当者はいかがでしたでしょうか。
ストライクさんには、私たちのニーズに合った候補先をご紹介いただきました。特にALiNKインターネットさんとのマッチングは、全国展開という共通点や、観光と天気の親和性など、多角的な視点でのご提案でした。
交渉過程でも、私たちの独自性を理解し、適切なサポートをいただけたことに感謝しています。
今後、M&Aを検討される経営者の方にメッセージをお願いします。
コンテンツ業界の方々には、選択肢の一つとしてM&Aを検討していただきたいです。一つのコンテンツを長く大切に育てたい方には、M&Aは有効な選択肢だと思います。
どういうコンテンツを運営していきたいのか、その目的に応じて検討することが大切です。私たちの場合は、地方創生という明確な目的があり、それを理解してくれるパートナーと出会えたことで、より大きな成長を実現できています。
M&Aは大手企業だけのものではありません。コンテンツを通じて社会に貢献したいという思いがあれば、きっと良いパートナーが見つかるはずです。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(山野 建・事業法人部 マネージャー談)

このたび、地方創生という大きな社会的意義を持つ案件に携わることができたことを大変光栄に思っております。
特に、「温泉むすめ」という日本各地の温泉地を舞台にしたユニークなIPに関わることができたことは、私にとって非常に象徴的な経験となりました。単なるエンターテインメントコンテンツとしてだけでなく、地域の魅力発信や観光振興に大きく貢献しているIPであり、その価値を次のステージへとつなぐ一助となれたことを誇りに感じております。
M&Aは企業同士の経済的な取引にとどまらず、関わるすべての人々の想いや地域の未来をつなぐ重要な役割を果たします。今回の案件でも、クライアント様の「社会のために、日本のために」という強い想いに共感し、それを理解し尊重してくださる理想的なパートナー企業様とご縁をおつなぎできたことを、心から嬉しく思います。
今後も一つひとつのご縁を大切にし、経済的価値だけでなく社会に貢献できるM&Aの実現を目指してまいります。
最後になりますが、IPの成長にチャレンジしてみたいとお考えの経営者の皆様がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。
2025年8月公開
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