ご成約インタビュー No.134
INTERVIEW
創業100年の信頼を承継し、長野県ナンバーワンを目指す
エフビー介護サービス、丸屋家具から福祉用具事業を譲受で地域密着戦略を加速
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- #介護・医療

エフビー介護サービス株式会社 代表取締役社長 栁澤 美穂氏
エフビー介護サービス株式会社 執行役員 福祉用具事業部 部長 中澤 幸雄氏
長野県佐久市に本社を置くエフビー介護サービス株式会社は2025年6月、創業100年の歴史を持つ株式会社丸屋家具から福祉用具貸与事業および福祉用具販売事業を譲受した。同社は福祉用具事業と介護事業を両輪とする総合介護サービス企業として、長野県内での事業基盤強化を図る。今回のM&Aの背景と目的、今後の展開について栁澤美穂社長と中澤幸雄執行役員にお話を伺った。
39年の業歴と「24時間365日」の理念で築いた地域密着型サービス
エフビー介護サービスの事業の特色と、他社との差別化ポイントを教えてください。

栁澤:エフビー介護サービスは、福祉用具事業と介護事業の2つを主軸として事業を展開しています。売上比率は介護事業が6割、福祉用具事業が4割となっており、福祉用具事業がこれだけ大きな割合を占めるのは珍しいかと思います。
創業は1987年で、私の父である代表取締役会長の栁澤秀樹が設立しました。介護事業に参入したのは2000年の介護保険制度開始と同時期です。
当社は「地域密着、24時間・365日、すぐやる、必ずやる、できるまでやる、すべては利用者様のために」という経営理念を掲げています。介護事業は決して大規模なものではなく、この経営理念に沿った地域に根差した地域密着型の介護サービスを特徴としています。

中澤:福祉用具事業も創業当初からずっと「24時間365日、利用者様に対応していこう」という創業者である会長の思いを愚直に守り続けていることです。働く従業員は大変かもしれませんが、会長の思いを守ることで利用者様にご満足いただけるサービスを提供できると考えています。
上場企業としての成長戦略にM&Aを位置づけ
M&Aを検討し始めたタイミングと、その背景にある経営判断をお聞かせください。
栁澤:2022年4月の上場前からM&Aの検討は続けていました。福祉用具事業のM&A案件はなかなかなく、今回のお話が初めて本格的に進めることができた案件です。
中澤:これまでも複数のお話はありましたが、本格的に進めるまでには至りませんでした。丸屋家具様のお話は「ぜひ進めたい」と思えるお話でした。
数ある候補の中から丸屋家具様を選ばれた決め手は何でしょうか。
栁澤:長野県という地域性が大きな決め手でした。当社の本社が佐久市にあり、地元での事業拡大を図りたいと考えていました。丸屋家具様は創業100年という歴史があり、地元である塩尻・松本エリアでの信頼も厚く、長野県では非常に有名な企業です。長野県で中心的なエリアである松本市や、その近隣の塩尻市は当社の福祉用具事業がそれほど展開できていませんでした。
中澤:長野県の高齢化率はそれほど高くありませんが、従業員をしっかりと守っていくためには事業規模の拡大が重要です。長野県内でも人口ボリュームが大きい長野市と松本市を中心として押さえていきたいと考えていました。
松本エリアで考えると、当社の松本営業所一か所だけでは十分にカバーできていませんでした。今回の事業譲受により、塩尻と安曇野を加えた3店舗でエリアをカバーでき、地域の皆様により良いサービス提供ができると考えています。




丸屋家具様のご面談時の印象はいかがでしたか?
栁澤:丸山社長は、地域で非常に顔が広い方で、地域の方々にしっかりと愛され、信頼されて事業をされている印象を受けました。福祉用具事業だけでなく、家具事業でも同様に信頼を得ておられ、これなら問題なく進められるだろうという安心感がありました。
福祉用具事業を「介護の入り口」と位置づける戦略的意図について詳しく教えてください。

中澤:福祉用具事業は介護の度合いが軽度の方から重度の方まで、在宅で介護される方の支援をさせていただくわけです。軽度の方は介護施設でサービスを受けることはなかなかありませんが、まずは福祉用具の方でしっかりと顧客との関係を築き、経過を経て中~重度になってきた段階で、周辺にある当社の介護施設でしっかりとケアをさせていただくという相乗効果が出てくると考えています。
建築費高騰の中でM&Aの重要性が増大
事業譲受の具体的なメリットをどのようにお考えでしょうか?
栁澤:継続的な施設の満室運営がキーになってくると考えています。入り口となる福祉用具事業がしっかりと固まることで、「エフビーさんね」という知名度向上から施設への入居が常に潤うというシナジー効果が生まれると期待しています。
また、現在は建築費が非常に高騰しており、新規で建物を建てることが困難な状況です。例えば、当社の新規開設施設では、建設費が以前の1.5倍から2倍近くになっています。介護保険の報酬はほぼ変わらないため、新規設立では利益を出しにくい状況にあります。そのため、M&Aという手法がより重要になってきています。
今回の事業譲受が地域社会に与える影響はどのようなものでしょうか?
栁澤:「長野県でナンバーワン」になりたいという目標があります。地域密着型のサービスを提供することで、より多くの高齢者の方々に質の高い介護サービスを提供できると考えています。
組織融合のプロセスについてお聞かせください。
中澤:事業譲渡された側の従業員の皆様は急激な環境変化にストレスを感じていると思いますので、できるだけソフトランディングを心がけています。まず目に見える変化として、オフィスのレイアウト変更から着手し、徐々に意識改革を進めています。
6都県117拠点から全国展開への成長ビジョン
現在の事業エリアを超えた全国展開の構想についてもお聞かせください。

栁澤:今後も事業を広げていきたいと考えていますので、M&Aについても、当社とマッチングする介護事業であれば、この地域に限らず、より幅広く展開していきたいと思います。
既存の営業所を足がかりに、まだ展開の余地がある東京や埼玉のベッドタウンの方へも広げていければと考えています。現在、当社は長野県を中心に新潟県、群馬県、栃木県、埼玉県、東京都の6都県で117か所の事業拠点を展開しており、さらなる拡大を目指しています。
中澤:M&Aにはスピード感があり、建築コストが高い中でも既存の施設を活用できるというメリットがあります。費用対効果を見ながら、様々な案件を検討しています。現在は点で展開している拠点を、うまくつなぎながら面にしていく動きをしていきたいと考えています。
人手不足と外国人材活用という業界課題に対する貴社独自のアプローチについて教えてください。
栁澤:深刻な人手不足に対し、海外人材の受け入れを積極的に進めています。ただし、現行制度では8年で介護福祉士の国家資格を取得しないと帰国しなければならず、外国人には難しい試験のため、制度緩和を国に働きかけています。
また、少ない人数で運営するため、日本の「自立支援」に基づく介護を重視し、利用者様ができることは自身でやっていただく考え方を、日本人・海外人材問わず全職員に教育しています。当社のミッションである「人生の最終ステージを利用者の幸せと満足で元気にする」の実現を目指し、利用者様だけでなく、社員からも選ばれる会社を目指しています。
ストライクのサービスや担当者はいかがでしたか?
栁澤:レスポンスも早く、全く問題なく、しっかりと対応していただきました。
中澤:今回のように福祉用具事業の事業譲受をするのはあまり経験がなく、慣れないこともありましたが、その都度担当の木村さんに質問し、噛み砕いて説明していただけたので、安心して進めることができました。
今後、M&Aを検討される経営者の方にメッセージをお願いします。
栁澤:M&Aを成功させるには、トップ同士が同じような考えを持っていることが重要だと思います。事業は「人」で成り立っており、従業員が辞めてしまっては運営が成り立ちません。ぜひ、当社の目指すべきビジョンと考えが近しい会社様と、今後M&Aを通じてご一緒できれば何よりと考えております。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(木村 郁哉・ヘルスケアグループ アドバイザー談)

株式会社丸屋家具様は、長年にわたり地域の皆様のニーズに応えながら、家具販売のみならず、福祉用具の貸与・販売事業にも力を入れて事業を展開されてまいりました。
このたび、同事業をより良い形で承継していくため、M&Aをご検討いただきました。
エフビー介護サービス株式会社様は、長野県内を中心に、介護事業および福祉用具の販売・貸与事業を幅広く展開されている企業であり、地域密着型のサービスに定評があります。
今回、丸屋家具様の事業承継について最初にご提案させていただいた際、エフビー介護サービス様より「ぜひお話を進めたい」とのお言葉をいただきました。その後は非常にスムーズに協議が進み、無事にご成約の日を迎えることができました。
M&Aは「ご縁」や「タイミング」が大きな要素を占めるものですが、今回はまさに両社にとってのベストマッチであったと感じております。
今後も地域の皆様に寄り添ったサービスが継続され、両社のさらなるご発展につながることを心よりお祈り申し上げます。
2025年8月公開
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