INTERVIEW

「環の力」で地方を救う。
建設コンサルタント業界の風雲児が描く、事業承継の新たなカタチ

株式会社弘洋第一コンサルタンツ 代表取締役 野口 桂司氏、株式会社光栄コンサルタント 代表取締役 西村 知晴氏、株式会社山腰測量設計事務所 代表取締役 菅原 暁氏、株式会社舟山コンサルタント 代表取締役社長 二本松 雅行氏、東邦コンサルタント株式会社 代表取締役 小松 雄次氏、ストライク田中

株式会社弘洋第一コンサルタンツ 代表取締役 野口 桂司氏

建設コンサルタント業界において、後継者不足や事業継続の困難は深刻な課題だ。特に地方ではその傾向が顕著で、長年地域を支えてきた企業の技術や雇用が失われかねない状況にある。そんな中、直近5年間で11社ものM&Aを成功させ、独自の成長戦略を突き進む企業がある。東京都杉並区に本社を構える、株式会社弘洋第一コンサルタンツだ。同社は、三重県南牟婁郡御浜町という人口約1万人以下の町で創業し、地方に根ざした建設コンサルタントとして歩みを重ねてきた。その原点を大切にしながら、現在は「事業承継に課題を抱える地方企業とのM&A」を掲げ、単なる規模拡大ではない、共存共栄のグループ形成をめざしている。
今回は、インタビューのために札幌の地に集まっていただいた、北海道のグループインした4社の代表と共に、弘洋第一コンサルタンツ代表取締役の野口桂司氏に、その哲学と未来への展望を伺った。

従業員を想う「心意気」がM&Aの絶対条件

事業内容を簡単にご説明いただけますか?

グループインした北海道4社の本社所在地

野口:弊社は、皆さんが生活する中でのインフラを整備する会社です。例えば、高速道路や河川の護岸、問題となっている下水道管の設計、さらには水道水のための浄水管や農作物を育てるための圃場(ほじょう)整備など、多岐にわたる公共事業を中心に測量・設計を行っています。また、測量設計だけでなく、DXの分野にも力を入れています。道路図面などを役所が管理しやすくなるような台帳システムを開発したり、横浜市様の建築確認申請データプログラムを構築したりと、システム開発も大きな柱です。最近では防衛省関係の仕事も増え、北海道から沖縄まで、全国各地の基地内の仕事などを手掛けています。

直近5年間で11社のM&Aを実行されていますが、2024年だと何件くらい検討されて実際に何件成約されましたか?

株式会社弘洋第一コンサルタンツ 代表取締役 野口 桂司氏
インタビューに応じる株式会社弘洋第一コンサルタンツ 代表取締役 野口 桂司氏

野口:お付き合いのある仲介会社さんが10社以上あり、異業種も含めると年間で100から150件ほどの提案をいただきます。その中から、私たちが専門とする建設コンサルタント・測量設計会社という分野に絞ると、10社から20社ほどになります。実際に面談まで進むのは、その中から3社程度ですね。結果的に、ここ1、2年は年間3件ほどのペースで成約しています。
直近5年で成約した11件のうち、5件がストライクさんによる仲介です。担当の田中さんは、建設コンサルタント業界のビジネスモデルや商慣習を深く理解していて、売主さんとの関係性も良好なので、安心して仲介を任せることができます。

M&Aを検討される際、どういった点が検討基準になりますか?

野口:一番の検討理由は、譲渡される会社の社長様が「自分より従業員を守ってほしい」と、従業員を大切にされているかどうか。その想いがある会社様としかM&Aはさせていただいていません。そこが最も重要なポイントです。お金が欲しい、会社を高く売りたいというご相談も正直たくさんありますが、すべてお断りしています。私たちはM&Aがゴールではなく、その後10年、20年、30年と一緒にやっていくパートナーを探しているのです。ですから、お互いのフィーリング、直感といった「ご縁」を何よりも大切にしています。

地方の技術と雇用を守る。
グループの「環」が生み出す無限の可能性

成長戦略として「事業承継に課題を抱える地方企業とのM&A」を掲げられていますが、「地方企業」にフォーカスされている理由を伺えますか?

株式会社弘洋第一コンサルタンツ 代表取締役 野口 桂司氏
グループ内の連携について語る野口代表

野口:一番大きいのは、当社がもともと地方からスタートした会社であるという点です。地方にあるからといって、仕事の質や内容が都会と大きく変わるわけではありません。メールやさまざまなツールを活用すれば、場所に縛られずに仕事はできます。私は、地元にいながら、きちんとした待遇で働ける仕事があることが、地方にとって最も望ましい状態だと考えています。
また、私たちの業界は、県をまたぎ単独で仕事を受注することが難しいという特性があります。公共事業は地域性を非常に重視するためです。しかし、グループになることで、例えば仕事が豊富な愛知県の会社が受注し、三重県のグループ会社が手伝うといった連携が可能になります。各地域に根差した会社がグループとして「環」になることで、仕事の繁閑の波を平準化し、お互いに助け合うことができるのです。

事業承継に課題を抱える会社さんにフォーカスを当てている理由を伺えますか?

野口:困っている人がいたら助け合う、それは人として当たり前のことではないでしょうか。企業であっても同じです。競争はあっても、本当に困っているなら手を差し伸べるのが大事だと考えています。「地域に担い手がおらず、このままでは事業が続けられない。でも、どうすればいいかわからない」そんな悩みを抱えた社長様に対して、「私たちのネットワークを使えばこんなことができます。一緒にやりませんか?」と提案する。ただそれだけです。特に私たちの業界は、あと5年もすれば技術者の高齢化で本当に取り返しがつかなくなると感じています。この2、3年が勝負です。一社で悩むのではなく、チームとなって弱い部分を語り合い、どう乗り越えていくかを一緒に議論できることが、私たちのグループの最大の強みです。

PMIで心がけていることを教えてください。
また、具体施策で成果があった例を教えてください。

グループ会社同士で贈りあった品物の一例
グループ会社同士で贈りあった品物の一例

野口:心がけているのは、まず社長同士が仲良くなること。そして次に、社員同士が仲良くなることです。そのために、北海道の会社からグループ全員にカニを送ってもらったり、創業地である三重県からは、みかんを送ったりしています。社員同士が「ありがとう」という会話から始めれば、仕事の依頼も命令口調ではなく、お互いに気持ちよく進められます。また、月に一度はグループの社長会議を開き、還暦を迎える社長のお祝いパーティーを企画するなど、グループ内の交流を大切にしています。新しく仲間入りした会社があれば、近くのエリアの社長たちが自然と世話を焼いてくれる。この「仲の良さ」こそが、私たちの強みです。指示や命令ではなく、自発的な思いやりを大事にした会社づくりが、結果として各社の増収増益につながっているのだと実感しています。

グループインで実感する未来への希望

株式会社光栄コンサルタント 代表取締役 西村 知晴氏

株式会社光栄コンサルタント 代表取締役 西村 知晴氏
グループイン後に黒字化を達成できたと話す西村氏

西村:グループインする前は12名だった社員が、現在は21名に増えました。売上もM&A前と比較して、ほぼ倍になっています。グループのスケールメリットは大きく、福利厚生も充実しました。何より、以前はなかなか黒字体質になれなかったのですが、グループイン後は黒字化を達成し、それを社員に還元できています。若い社員も増え、会社に活気が出てきたことを感じています。

株式会社山腰測量設計事務所 代表取締役 菅原 暁氏

株式会社山腰測量設計事務所 代表取締役 菅原 暁氏
グループ連携による仕事の平準化のメリットを語る菅原氏

菅原:北海道の冬は仕事が少なくなるのが悩みでしたが、グループインしたことで、通信環境を活かして本州の設計業務などを社内で行えるようになりました。これは単独ではできなかったことです。また、グループ内のつながりでネパール人の社員を迎え入れました。彼の勤勉な姿勢は、同年代の日本人社員にとっても大きな刺激になっており、新しいことに挑戦していく活力が生まれています。

株式会社舟山コンサルタント 代表取締役社長 二本松 雅行氏

株式会社舟山コンサルタント 代表取締役社長 二本松 雅行氏
M&Aが実現した、会社の未来と活気を語る二本松氏

二本松:M&Aによって経営基盤が安定し、顧客からの信頼度も向上しました。その結果、若い人材からの応募が顕著に増えています。入社してくれた若者たちが「将来が楽しみです」と生き生きと語ってくれるようになったのは、何より嬉しい変化です。会社の活気が増し、私自身も「もっと会社を大きくできる」という期待感を持って経営に取り組めています。

東邦コンサルタント株式会社 代表取締役 小松 雄次氏

東邦コンサルタント株式会社 代表取締役 小松 雄次氏
戸惑いから安堵へ。「仲間」との出会いを振り返る小松氏

小松:グループインする際、従業員からは当初戸惑いの声もありましたが、会社の状況を危惧していた者からは「経営陣が会社の未来を考えてくれていたんだ」という安堵の声も聞こえました。弘洋第一コンサルタンツさんは、私たちと全く同じ考え方、同じ業種で仕事をする「仲間」だと感じられたのが決め手です。全国の仕事に携わるチャンスを得て、会社を立て直し、職員を育てていきたいという希望を持っています。

最後に、弘洋第一コンサルタンツのアピールポイントを教えてください。

野口:私たちは2029年までにグループ売上100億円という目標を掲げていますが、それはあくまで結果です。一番大切なのは、社員を本当に大切に想う経営者の方々と支え合う「環」を築き、共に成長していくこと。私たちのグループには、11社の社長たちが築き上げてきた成功の事実と、お互いを助け合う温かい文化があります。もし後継者問題や事業の将来に悩みを抱えているのであれば、ぜひ一度お話をお聞かせください。きっと、お力になれることがあるはずです。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(田中 遼真・北海道営業部 シニアアドバイザー談)

ストライク田中 遼真

弘洋グループが実践される経営は、まさに政府が掲げる「地方創生2.0」を体現するものだと強く感じております。地域のインフラを支える「まち」づくり、採用や育成など「ひと」への投資、技術の承継と処遇向上により「しごと」の価値を高める。地域のルールや文化を尊重しながら、「まち・ひと・しごと」が自律的に循環する「グループ経営」は、地方創生の理想的な姿です。地方経済に新たな付加価値を生む「ローカル・ゼブラ企業」の先駆けとして、今後もその飛躍を期待しております。

2026年2月公開

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