M&A件数が増加している理由は?
最新動向と今後の展開予測、成功事例を解説
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近年、日本国内ではM&Aの件数が増加傾向にあります。本記事では、M&Aが増えている理由をはじめ、最新の市場動向や今後の展開予測について、M&A仲介会社の視点から分かりやすく解説します。M&Aの基本的な意味や手法については、〈M&Aとは〉で詳しく解説しています。
監修者プロフィール
株式会社ストライクグループ コーポレートアドバイザリー部
コーポレートアドバイザリー部は、弁護士・司法書士・公認会計士・税理士など、法務・会計・税務の専門性を持つメンバーが在籍する専門部門です。累計3,600件超のM&A成約実績を持つストライクグループにおいて、アドバイザーと連携し、M&Aの手法提案、契約実務、企業価値評価、税務上の留意点などの観点から、案件支援およびコンサルティング品質の向上に関与しています。
<この記事の概要>
M&A件数が増加している背景には、後継者不在問題の深刻化や業界再編、成長戦略の投資としての定着化といった構造的な変化があり、今後も増加が見込まれます。市場動向、活用の目的・メリット、成功事例を踏まえ、M&Aを進めるべきかどうかを冷静に判断するための軸を整理します。
目次
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最新のM&A件数と動向
日本国内のM&A市場は、上場企業を中心に引き続き活発な状況が続いています。
特に近年は、国内案件に加えてクロスボーダーM&Aも増加しており、業界再編や成長戦略を背景とした動きが顕著です。
本セクションでは、公開されている統計データをもとに、上場企業によるM&Aの最新動向を整理します。
国内の上場企業によるM&A案件が引き続き増加
日本国内では、上場企業によるM&Aが引き続き活発に行われています。
M&A専門メディア「M&A Online」の「2025年M&Aサマリー」によると、2025年に上場企業が公表したM&A件数は1,344件となり、2021年から5年連続で増加しました。
取引総額も20兆円を超え、件数・金額ともに過去最高を更新しています。
特に、日本企業同士によるM&A案件は前年と比べて12.1%増加しており、国内市場における業界再編の動きが加速していることが分かります。
業界別に見ると、製造業、IT・ソフトウェア、建設、物流、ヘルスケア分野でM&Aの増加傾向が見られます。
これらの業界では、事業ポートフォリオの見直しや競争力強化を目的としたM&Aが多く、市場環境の変化に対応する手段として活用が進んでいます。
出典:【2025年M&Aサマリー】件数は過去最多の1344件、金額は20兆円超えで歴代最高値を更新(M&A Online)
海外企業とのM&A案件も増加傾向
国内案件に加え、海外企業とのM&A、いわゆるクロスボーダーM&Aも増加傾向にあります。
M&A Onlineの調査によると、日本企業が買い手となるIn-out案件は前年比で9%強減少したものの、海外企業が買い手となるOut-in案件は前年比で23%強の増加となりました。
In-out案件では、案件数は減少したものの引き続き高い水準にあり、日本企業が海外市場への進出や成長機会の獲得を目的として、現地企業を買収する動きが見られます。
一方、Out-in案件では、日本企業の技術力や安定した事業基盤が評価され、中小企業を対象とした取引も増加しています。
このように、クロスボーダーM&Aは活発化しており、企業の成長戦略や事業基盤強化を支える手段として定着しつつあります。
出典:2025年の海外M&A、3年連続で最多更新「インバウンド」案件が2割増(M&A Online)
M&A件数が増加している理由
近年M&A件数が増加している背景には、単一の要因ではなく、複数の環境変化や経営課題などの要因が重なっています。
中小企業へのM&A支援体制の拡充や成長戦略としての定着に加え、財務環境や制度面の整備、後継者問題の深刻化などが要因として挙げられます。
M&A件数が増加している主な理由
- 中小企業向けにM&Aの相談、アドバイザリー業務を行う企業や公的機関が増えた
- 成長戦略を目的としたM&Aを活用する企業が増えている
- 金融緩和などを背景に企業の財務状態が改善している
- 法改正によりM&Aを実行しやすくなった
- 業界再編を目的としたM&Aが増えている
- DXの推進を目的としたM&Aが増えている
- 後継者不在により事業承継M&Aが増加している
本セクションでは、M&Aが増加している主な理由を整理し、その構造を分かりやすく解説します。
中小企業向けにM&Aの相談、アドバイザリー業務を行う企業や公的機関が増えた
M&A件数が増加している要因の一つに、中小企業を対象としたM&Aの支援体制の拡充が挙げられます。
近年は、M&A仲介会社やアドバイザリー業務を行う企業に加え、金融機関や商工会議所、自治体などの公的機関もM&A支援に関与するケースが増えています。
これにより、M&Aに関する情報に触れる機会や相談機会が広がり、経営者が選択肢として検討しやすい環境が整いつつあります。
また、専門家の支援を前提とした進め方が一般化したことで、M&Aに対する心理的・実務的なハードルが下がっています。
成長戦略を目的としたM&Aを活用する企業が増えている
M&Aは、事業承継だけでなく、企業の成長戦略として活用されるケースが増えています。
新規事業の立ち上げや市場参入を一から始めるよりも、既存企業を取得することで、時間を短縮し、リスクを抑えながら成長を実現できる点が評価されています。
特に上場企業や成長志向の中堅企業では、M&Aが経営戦略の一部として位置付けられ、継続的に活用されており、このような動きが市場全体のM&A件数を押し上げる要因となっています。
金融緩和が続いたことを背景に企業の財務状態が改善している
長期的な金融緩和政策を背景に、企業の財務状態や資金調達環境は比較的安定した状態が続いてきました。
これまでに積み上がった潤沢な内部留保(手元資金)を背景に、M&Aに充てる資金を確保している企業は少なくありません。
財務基盤が安定していることで、M&Aを成長投資として検討する余地が広がり、実行に踏み切る企業が増えています。
法改正によりM&Aを実行しやすくなった
制度面の整備も、M&A件数増加に寄与しています。
会社法やM&A関係法令の見直しにより、組織再編や株主の整理などM&Aを進めやすい環境が整ってきました。
また税制の改正により、金銭面でもM&Aを実行しやすくなっています。
制度面の整備が進んだことで、M&Aを現実的な選択肢として捉える企業が増えています。
業界再編を目的としたM&Aが増えている
市場の成熟や競争激化を背景に、業界再編を目的としたM&Aも増加しています。
同業種同士の統合により、規模の拡大やコスト効率の向上を図る動きが見られ、特に製造業や建設、物流などの分野では、再編を通じて競争力を強化する事例が増えています。
こうした業界再編型M&Aも、全体の件数増加につながっています。
DXの推進を目的としたM&Aが増えている
デジタル化の進展に伴い、DXを目的としたM&Aも拡大しています。
IT人材やシステム、デジタル技術を自社で一から構築するのではなく、M&Aによって迅速に取得する動きが見られます。
IT企業やスタートアップとのM&Aは、業種を問わず増加しており、異業種間のM&Aが活発化する要因にもなっています。
後継者不在により事業承継M&Aが増加している
M&A件数の増加要因のうち、特に影響が大きいのが後継者不在問題です。
中小企業では、経営者の高齢化が進む一方で、親族内や社内に後継者が見つからないケースが増えています。
その結果、廃業ではなく第三者への承継手段として、M&Aを選択する企業が増加しています。
事業や雇用を維持しながら引き継げる点が評価され、事業承継型M&Aは今後も重要性を増すと考えられます。
事業承継におけるM&A
事業承継とは、企業の経営権を次の世代へ譲り渡すことです。「2025年問題」を迎え、国は事業承継を喫緊の課題と考えるようになりました。
2025年問題とは、2025年にいわゆる「団塊の世代」が75歳以上となったことで発生する諸問題のことを指します。企業の社長年齢の高齢化や後継者不足も、そのうちの一つと考えられており、現状を放置すると中小企業・小規模事業の廃業が急増すると懸念されています。
(株)東京商工リサーチの『~2024年「全国社長の年齢」調査~』によると、2024年の社長の平均年齢は63.59歳と、調査を開始した2009年以降で最高を更新しました。また後継者の有無については、62.15%の企業が「後継者が不在」と回答しており、多くの企業で社長の高齢化・後継者問題を抱えていることが分かっています。実際、2024年には後継者不足を原因の一つとする倒産が462件発生し、5年連続で最多を記録しました。
※出典:株式会社東京商工リサーチ「社長の平均年齢 過去最高の63.59歳最高齢は秋田県66.07歳、最年少は広島県62.45歳」
※出典:株式会社東京商工リサーチ「後継者不在率、1.06ポイント上昇の62.15% 誰のための「事業承継」か検証も必要」
事業承継の種類とM&A
事業承継にはいくつかの種類があり、M&Aはそのうちの一つです。M&Aの他に親族内承継や従業員承継などがあり、一概に「事業承継=M&A」というわけではありません。それぞれの違いは、以下の通りです。
- 親族内承継:子など経営者の親族に事業を承継させる方法
- 従業員承継:社内の従業員などに事業を承継させる方法
- M&A(第三者承継):社外の第三者に事業を承継させる方法
M&Aにより事業承継を行うメリット
事業承継の手段としてM&Aを選択するメリットは以下の通りです。
後継者問題を解決できる
M&Aにより事業承継を行えば、買い手企業の人材又は外部リソースから適切な後継者を配置することができます。親族内承継や従業員承継のように限られた範囲から後継者を見つけ出す必要がありません。
事業の継続性を担保できる
財務基盤のしっかりとした買い手企業にM&Aにより事業承継すれば、買い手企業は、事業を継続するのみならず、拡大できる可能性もあり、取引先や顧客に安心感を与えることもM&Aの大きな効果といえます。
従業員の満足度を高める
廃業を選べば従業員の雇用は維持できません。しかし、大手企業が買い手になることで福利厚生が充実し、雇用環境が改善するケースもあります。従業員の流出は買い手企業にとっても懸念材料のため、少なくともM&Aで直ちに従業員の立場が悪くなるということは一般的にありません。
創業者利潤を獲得できる
売り手経営者は事業承継することで個人保証や経営のストレスから解放され、譲渡益を元手にセカンドライフを楽しむことができます。また、手にした資金で新たな事業を始める選択肢も出てくるでしょう。
会社を次のステージに引き上げられる
M&Aを行うことで、売り手の中小企業・買い手の大手企業それぞれが次のステージに上がることができます。
革新的な技術やビジネスモデルを有しているものの、資本力やブランド認知度に欠けやすい売り手の中小企業は、M&Aを戦略的に活用して買い手の大手企業の傘下に入ることにより、単独では超えられなかった事業上の限界を超えることが可能になります。
一方、買い手の大手企業は、既存のビジネスモデルの制約があるため、社内と競合する分野の技術開発やリソースを持たない領域への進出が難しく、市場の変化に対応できないという課題を抱えていることがあります。既存事業とシナジーが期待できる企業や、関連する技術や知財を有する企業をM&Aで傘下に収め、事業を新たなステージへ引き上げることができることもあります。
今後のM&A市場の予測
今後のM&A市場は、中長期的に見ても一定の拡大が見込まれます。
少子高齢化による後継者問題の深刻化に加え、成長戦略や人材確保を目的としたM&Aの重要性が高まっているためです。
本セクションでは、今後のM&A市場において特に注目される動向を整理します。
事業承継M&Aが加速する
日本では少子高齢化が進行しており、中小企業を中心に経営者の高齢化と後継者不在が深刻化しています。
総務省統計局の統計によると、総人口は減少傾向にあり、高齢者人口の割合は年々上昇しておりますが、この影響により黒字であっても後継者が見つからず廃業を選択する企業が増えています。
事業や雇用を維持する事業承継の手段として、第三者承継を可能とするM&Aの重要性は今後ますます高まっていくと考えられるでしょう。
※出典:総務省統計局「統計局ホームページ/統計トピックスNo.145/全国」
クロスボーダーM&Aが増加する
国内市場の成熟を背景に、今後もクロスボーダーM&Aは一定の存在感を保つと見込まれます。
日本企業による海外企業の買収は、為替や地政学的リスクの影響を受けながらも、成長市場への進出や技術・人材の獲得手段として引き続き活用されるでしょう。
一方で、海外企業による日本企業の買収も、日本の技術力や安定した事業基盤への評価を背景に継続すると考えられます。日本企業の子会社である海外現地法人による日本企業の買収も増えていくものと考えられます。
グローバルな視点でのM&A活用は、今後の成長戦略において欠かせない要素であり注目されます。
スモールM&Aが増加する
今後は、大規模案件だけでなく、比較的小規模なM&A、いわゆるスモールM&Aの増加が見込まれます。
中小企業の事業承継を目的としたM&Aや、人材・ノウハウの獲得、第二創業を目的とする案件が考えられます。
同業種同士のM&Aに加え、異業種間でのM&Aも拡大しつつあり、柔軟な事業連携の手段として活用が進む可能性があります。
企業の成長戦略を目的とするM&Aがますます増加する
今後のM&A市場では、企業の成長戦略を目的とした活用がより一層進むと考えられます。
市場環境の変化が激しい中で、時間をかけた自力の成長だけでなく、M&Aによって非連続な成長を実現する動きが拡大しています。
IT、ヘルスケア、製造、建設、物流、小売、飲食など、幅広い業種でM&Aが成長戦略の一部として位置付けられ、このような流れからM&Aは一時的な選択肢ではなく、継続的に活用される経営手法として定着していくと考えられます。
Strike Insight
専門家が読み解くM&A市場の「現在地」
活況を呈する市場:買い手候補の分母が急増
2025年の上場企業によるM&A件数は前述のように1,344件と過去最高水準にあり、この活発な動きは、中小企業のM&A市場においても、買い手候補の分母を広げるとともに、評価水準にも一定の影響を与えるというポジティブな側面をもたらしています。
つまり売り手企業にとっては、「選べるパートナー」が増えている状況であり、自社の意向や将来像に合った相手を見つけやすい環境が整いつつあるといえます。
※M&A Online M&Aデータベース:リンク
専門家の視点:製造業の倍率は「3.67倍」(中央値)
M&Aの検討において、経営者が最も関心を持つ論点の一つが「自社の評価(バリュエーション)」です。
当社の直近の成約実績(※2)では、製造業(素材・機械分野)におけるEV/EBITDAマルチプルの中央値は3.67倍となっています。
本数値はサンプル数やレンジを踏まえた統計的な傾向であり、個別企業の評価は事業内容、成長性、収益構造、買い手とのシナジーなどによって大きく変動します。そのため、あくまで一つの参考水準として捉えることが重要です。
※注:上記は製造業のデータであり、IT業やサービス業などでは評価指標や水準が大きく異なる点に留意が必要です。業種ごとの相場観や自社の評価については、個別の状況に応じた分析・シミュレーションが不可欠です。
M&Aを検討すべきタイミング――専門家が現場から見た判断基準
市場の追い風が続く現在は、選択肢を確保したうえで冷静に判断できる環境にあります。
一方で、事業承継は時間的な制約を伴うテーマでもあり、「まだ先の話」として後回しにするほど選択肢は限定されていきます。
まずは自社の現状を客観的に把握し、どのような選択肢があり得るのかを整理することが、最適な意思決定への第一歩となります。私たちは現場での支援を通じて、早期に検討を開始した企業ほど、より納得度の高い結果に繋がるケースが多いと認識しています。
【出典・注釈】
※出典:
東京商工リサーチ TSRデータインサイト 『社長の平均年齢 過去最高の63.59歳 最高齢は秋田県66.07歳、最年少は広島県62.45歳』
東京商工リサーチ TSRデータインサイト 『後継者不在率、1.06ポイント上昇の62.15% 誰のための「事業承継」か検証も必要』
※2:当社成約案件に基づく中央値(2025年3月25日抽出。サンプル数n=17、レンジ2.03〜6.90倍。著しく乖離した少数案件を除外した中央値を採用)
実際のM&A成功事例
M&A市場が売り手有利な環境にあるとはいえ、実際に自社を譲渡するとなれば様々な不安が伴うかと思います。
当社を通じてM&Aを実現された経営者様が、当時どのような悩みを抱え、どのように決断されたのか。実際のリアルな体験談はM&A成功事例・ご成約インタビューからご覧いただけます。
ストライクのM&A仲介・アドバイザリーサービス
ストライクは、事業承継や成長戦略など幅広いM&Aニーズを支援するM&A仲介・アドバイザリー企業です。
M&Aに精通した専門アドバイザーが、財務・法務・税務など多面的な観点から、企業ごとの状況に応じた支援を行っています。また、ストライクでは営業部門とは独立した審査体制を設け、案件進行や情報管理の品質向上にも取り組んでいます。
ストライクの具体的な支援体制や品質管理の仕組みについては、ストライクのM&A仲介・アドバイザリーサービスで詳しく解説しています。
よくある質問
本セクションでは、M&A件数が増加している背景や今後の市場動向について、よく寄せられる質問を一部紹介します。
Q. M&Aを検討し始めるタイミングはいつがよいですか?
後継者不在や人材不足、事業の成長鈍化、業界再編への対応などに課題を感じ始めた段階で、早めに検討を始めることが重要です。実際にM&Aを実行するかどうかは別として、早期に選択肢を整理しておくことで、より納得度の高い判断につながります。
Q. 小規模な会社でもM&Aは可能ですか?
可能です。近年は中小企業や小規模企業を対象としたM&Aも増えており、事業承継、人材・ノウハウの獲得、地域内での事業引き継ぎなどを目的とした案件も見られます。会社の規模だけでなく、事業内容、収益性、取引先、技術、従業員体制などが総合的に評価されます。
Q. M&Aで会社を譲渡すると、経営者はすぐに退任する必要がありますか?
必ずしもすぐに退任するとは限りません。譲渡後も一定期間、経営者が会社に残り、取引先や従業員への引き継ぎを行うケースもあります。具体的な関与期間や役割は、譲渡企業・譲受企業の意向やM&Aの条件によって異なります。
Q. M&Aを相談する際、最初から詳細な資料は必要ですか?
必ずしも最初から詳細な資料が揃っている必要はありません。初回相談では、事業内容や現在の経営課題、今後の方向性などを整理しておくだけでも十分です。実際には、相談を進めながら必要資料を段階的に整理していくケースも多く見られます。まずは「自社にどのような選択肢があるのか」を把握することが、検討の第一歩となります。








