INTERVIEW

日本の「うまい」を未来永劫に
まん福ホールディングスが創る、食の事業承継プラットフォーム

まん福ホールディングス株式会社 専務取締役CPO 九嶋広一氏

まん福ホールディングス株式会社 専務取締役CPO 九嶋広一氏

日本の食産業は、後継者不足による廃業の危機に直面しています。この課題に真正面から挑み、「うまい」でこの星をしあわせ一杯に。」を経営理念に掲げ、食に特化した事業承継プラットフォームを構築しているのが、まん福ホールディングス株式会社(以下:まん福HD(本社東京都千代田区))です。同社は2025年12月現在、株式会社フード・フォレスト(以下:フード・フォレスト(静岡県浜松市を中心に関東・東海エリアで定食業態を展開))を含め国内外14社をグループに迎え入れ、食のサプライチェーンを構築しています。
特に注目すべきは、M&Aによる承継を単なる延命措置とするのではなく、グループ全体の共同購買力を最大限に活用し、原価改善に尽力している点です。このコストメリットを含め顧客へ「安くて美味しい商品を提供する」というバリューとして還元する戦略を打ち出しています。さらに、今回のフード・フォレスト承継は、物流戦略の強化と関西圏・東海圏(大阪、京都など)への商圏拡大という明確なM&Aの狙いがありました。
この戦略を牽引するまん福HD 専務取締役CPO 九嶋広一氏に、フード・フォレストの譲受の経緯、グループが目指す「食のエコシステム」、そして今後の展望について詳しく伺います。

まん福ホールディングス株式会社
ご成約インタビュー動画

食の文化を守り抜く使命 まん福HDが描くエコシステム

御社の事業内容と、食の事業承継プラットフォームを立ち上げた動機をお聞かせください

まん福ホールディングス株式会社 専務取締役CPO 九嶋広一氏
「日本の食文化を絶やさず未来永劫を続けていきたい」と話す九嶋氏

まん福HDは、フード・フォレスト社を含む国内外14社の食品関連企業を引き継ぎ、日本の食産業における事業承継プラットフォームとして運営しています。弊社の事業構造は、川中(魚や肉の加工工場)、川下(店舗運営)までをカバーしており、北海道から熊本まで全国にわたるグループ企業間でシナジー効果を最大限に活用した運営が強みですね。
この事業の根幹は、「後継者不足から食の会社を守り、経営を引き継ぐ」ことにあります。私たちが食に特化して事業承継を行うのは、伝統ある日本の食文化が、単に後継者がいないという理由だけで失われることを防ぎ、「次に何を食べるのか」という社会的な危機感に応えるためです。
承継各社の現場に入り込んでいるメンバー全員が飲食・外食産業の経験者であることから、「我々自身が後継者となり、日本の食文化を絶やさず、未来永劫に続けていく」という使命のもと、まん福HDを立ち上げ、皆様から事業承継をさせてまいりました。

承継する企業を選ぶ際の最も重要なポイントは何ですか?

弊社は創業当時より、事業承継の対象を「食に関わる後継者不足で悩んでいる方」に限定しています。その上で、商品や食材において「美味しさ」を追求していることを最も重要な選定基準です。
弊社が承継する前の試食の段階で、基準を満たさない「美味しくない」と判断された企業様については、残念ながらお断りさせていただいています。
「これは美味しい、残していきたい」と確信できた企業様に対してのみ、我々から「ぜひ承継させてください」とお願いをしています。
私たちは「うまいもの」を残していきたいという信念をぶらすことなく、これを経営の根幹としています。現在の経営理念は「「うまい」でこの星をしあわせ一杯に。」であり、この理念を守り続けたいです。

グループの購買力と共同購買による原価改善戦略

中小の食関連企業が抱える後継者不足や人件費高騰などの問題に対し、九嶋氏はどのように解決を図っていますか?

「和ごはん とろろや 佐鳴台本店」で提供している牡蠣フライと銀ヒラスの西京味噌漬け焼の2種盛膳
「和ごはん とろろや 佐鳴台本店」で提供している牡蠣フライと銀ヒラスの西京味噌漬け焼の2種盛膳

当然ながら、引き継いだ会社一社だけでは解決できない課題も出てきます。弊社グループは国内外で現在14社ありますので、特に国内13社間でそれぞれの“いいとこ取り”をしながら問題解決を図ります。
最近引き継いだフード・フォレスト社(静岡県浜松市)では、特に仕入れの部分に課題がありました。引き継いでから1ヶ月が経過しましたが、すでにテコ入れを開始し、現在、原価と食材費の改善を進めている最中です。この改善の柱となるのが、グループ内での共同購買です。
グループの強みは、冒頭に申し上げた通り、その購買力にあります。会社の規模が広がれば広がるほど、購買力は有利になり、フード・フォレスト社の皆様には現在、その良い影響が出ていると思いますよ。

M&Aの明確な狙い 物流戦略の強化と新商圏の獲得

今回、フード・フォレストをグループに迎え入れた戦略的な動機、M&A取引の狙いは何ですか?

まん福ホールディングス株式会社 専務取締役CPO 九嶋広一氏
「M&Aの動機は物流戦略の強化」と語る九嶋氏

私は主に東海エリア(静岡・愛知など)を担当していますが、まん福HDは現在、北海道、関東、東海、そして離れた熊本に拠点が分散しています。私がグループ仕入れも担当していることから、昨今の物流費の高騰に対応するため、西日本に拠点を持ちたいという狙いがありました。
また、他社の物流に頼らず自社で物流をコントロールできるようになることも重要です。今回のフード・フォレスト社のM&Aの動機は、まさにこの物流戦略に加え、これまで商圏がなかった関西地区に商圏を築くことでした。フード・フォレスト社は、この新しい商圏における要となる拠点だと捉えています。今後は、愛知、大阪、京都へと商圏を広げていきたいですね。

フード・フォレストのどんなところに魅力を感じ、グループに迎え入れようと思ったのですか?

まん福HD本社の様子
まん福HD本社の様子

我々はこれまで川中・川下で飲食店を経営する会社を引き継いできましたが、自然薯やとろろを使った定食というカテゴリーを戦略的に持っていませんでした。そのため、このジャンルを新たな仲間に加えたいと考えました。
また、フード・フォレストは女性社長が立ち上げた定食屋であるため、健康志向であること、そして店舗に女性のお客様が非常に多いという特徴があります。これは、我々グループが持ち得なかった客層やカテゴリーであり、非常に魅力的であったため、ぜひグループに迎え入れたいという思いから話を進めさせていただきました。
今後も新しい企業を取り入れる際は、今までにない視点(新しいカテゴリーや客層)と、グループに入ったときにどのようなシナジー効果を生めるかという二つの軸で検討し、M&Aを進めていきたいと考えております。

顧客へ提供するバリュー:コスト改善を活かした「値下げ」の決断

今回の承継によって、具体的にどんなシナジーが生まれていますか?

まん福HDが仕入れるサバ
まん福HDが仕入れるサバ

フード・フォレストの前オーナーの森口氏は、魚の仕入れに課題を抱えていました。私は東海エリアを担当しており、同エリアには弊社グループの水産加工会社があります。
そのため、問屋などを介さず、この水産加工会社からフード・フォレストへ直接納品することが可能となりました。これにより中間マージンを省いた直接価格で仕入れができるようになり、この価格を森口氏にお伝えした際、「そんな価格で仕入れができるのか」と非常に驚かれました。現在も、現場の店長たちと協力しながら商品の見直しを進めており、すぐに効果が出ると確信しています。
フード・フォレストは値上げをせざるを得ない状況にありましたが、我々グループのメンバーは大手チェーン出身者もおり、お客様に価値を感じていただきたいと考えています。我々が参画することでコストが抑制できるのであれば、お客様が望む「安くて美味しいもの」を提供できるため、一旦値下げを検討しています。
この値下げ戦略において、売上高は、お客様の数は微増する効果があるという前提で基本的には横ばい、あるいはわずかに上昇すると見込んでおります。

グループ化によって、顧客にはどのような価値を提供できるとお考えですか?

グループ化によって顧客に提供できる価値は、業態によって異なりますが、最も大きなメリットは価格の訴求力ですね。
現在、多くのメーカーで飲料やお菓子などが値上がりしている中で、我々グループは価格を維持、または適正化することで対応しているので、これにより、お客様には価格以上の価値を感じていただき、来店動機につなげたいと考えています。
来店頻度を高めることも目標の一つです。「週に1回」の利用を「週に2回」にしていただけるよう、飽きさせないメニュー開発にも力を入れます。北海道から熊本まで、グループが網羅する食材のメリットを活かし、お客様に大きなインパクトを与えられるように取り組んでまいります。

未来永劫に食の未来をつなぐ挑戦と課題

九嶋氏が描かれている「食のエコシステム」とはどのような姿ですか?

まん福HDのグループ会社の料理
まん福HDのグループ会社の料理

現在進行中の「食のエコシステム」の構築は、「エコ」という言葉の通り、コストの維持やコストダウンを当然進めていく流れですが最も重要なのは我々の理念の通り、「美味しさ(うまさ)でお客様に幸せになっていただく」ことです。
承継各社の現場に入り込んでいるメンバーは、飲食店の現場から経験を積んできた者ばかり。「美味しいね」「ありがとう」といったお客様の言葉をいただくことが喜びであり、飲食業界で働く原動力となっています。
したがって、私たちが引き継いだ企業の商品や食材に対して、「うまいね、また来てよかったよ」と言っていただけることが、私たちにとって最高の褒め言葉です。

グループ化における最大の挑戦や課題は何だと思いますか?

グループ化における最大の挑戦は、全オーナーの方々が続けてきた事業を、我々がどこまで継続できるかという点だと思います。
我々の理念は「未来永劫を続けていく」ことですが、「どうやったら本当に未来永劫を続けていけるのか、どうやったら残していけるのか」という問いは、常に掲げている根本的な課題です。
この課題を解決するためには、現在フォーカスしている食材の国内品の供給が、本当にどこまで続くのかという根本的な問題にも向き合わなければなりません。
そのため、事業の継続性を確保するために、創業当時は手を出さないとしていた一次産業の領域にも視野を広げています。例えば、お米の事業や農業関連の企業を引き継ぐなど、新しい分野にもチャレンジしていく可能性があります。

M&Aを検討されている経営者の方へメッセージをお願いします

まん福ホールディングス株式会社 専務取締役CPO 九嶋広一氏、ストライク相馬
まん福ホールディングス株式会社 専務取締役CPO 九嶋広一氏と担当コンサルタント 相馬峻平

今の状況を誰も責めることはありません。ぜひ勇気を持ってご相談いただければ、必ず状況は前進すると考えています。
まん福HDとしては、御社を全力で引き継がせていただきたいと考えておりますので、いつでもお声がけいただければ幸いです。

ストライクのサポートについてはいかがでしたか。

非常に良かったと感じています。いつ電話してもすぐに対応していただけました。
我々もスピード感を持ってM&Aを進めたいと考えていたため、仲介の担当者がそのスピード感に乗り、週末を問わず連絡を取れる体制を整えてくださったことに大変感謝をしています。
インフォメーション・メモランダム(IM)の作成から始まり、ご提案、そして案件が成就するまでの期間は、かなり早かったですね。今回の案件はゴールデンウィーク頃から認識していましたが、半年を経たずにクロージングという形になり、非常にスピード感がありました。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(相馬 峻平・事業法人部 アドバイザー談)

ストライク相馬 峻平

本件で最も印象に残っているのは、両社による初めてのトップ面談です。まん福HD様は、飲食店の運営に留まらず、川中の食品加工から幅広く手掛けておられます。面談の場では、その場で新メニューのアイデアが飛び出したり、安定した仕入れ体制の構築について議論されたりと、両者が将来への期待に胸を膨らませながら対話されていた姿が深く記憶に刻まれています。
また、まん福HDの皆様は、何よりも「現場」を深く理解されています。オーナー様や従業員の皆様の想いに寄り添い、共に新しい解決策を模索してくださる姿勢が、今回の素晴らしいご縁に繋がったのだと感じております。
今後のグループ全体でのさらなるご発展を、心より祈念しております。

2026年3月公開

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