INTERVIEW

瓦せんべい150年の伝統を現代へ"翻訳"する
――創業120年の老舗プロデュース企業
「はりま家」の成長戦略

株式会社はりま家様
譲渡企業様 譲受企業様
企業名 株式会社宗家くつわ堂 株式会社はりま家
所在地 香川県高松市 高知県高知市
事業内容 瓦せんべいをはじめとする銘菓の製造・販売(創業約150年) 食品・土産品の企画・開発・製造・販売、ブランドプロデュース(創業約120年)
M&Aの目的 後継者不在の解決、伝統ブランドの次世代への継承 伝統ブランドの価値翻訳・グループ全体の成長戦略加速
今後のテーマ はりま家の企画力・販路を活かした本業のさらなる成長 新ブランド立ち上げ・大都市圏/EC展開

株式会社はりま家
ご成約インタビュー動画

この記事のハイライト

課題:高知県を拠点に創業約120年の歴史を持つはりま家は、ブランドプロデュース力・企画力・販路を武器に成長を続けてきた。次なるステージとして、自社の強みを最大限に活かせる「伝統ブランドの再生・価値翻訳」に挑める譲受先を模索していた。

決断:明治10年創業・150年の歴史を誇る宗家くつわ堂が持つ本質的なブランド価値に着目。数字だけでは測れない両社の文化・人柄の一致を確認し、「納得感」を最後の判断軸としてグループ化を決断。創業100年超の老舗同士が一つのチームとなる、歴史的なM&Aが実現した。

成果:成約後わずか数か月で新商品開発や新ブランド戦略が具体的に始動。「変わらないために、変わり続ける」という理念のもと、大都市圏・EC展開を視野に入れた成長戦略が動き出している。150年の伝統を現代の言葉へ"翻訳"し、次の世代へとつなぐ新たな挑戦が始まっている。

株式会社はりま家 代表取締役社長 千頭 一弘 氏、ストライク 雑賀 憲太・矢野 大地
株式会社はりま家 代表取締役社長 千頭 一弘 氏(中央)
ストライク 雑賀 憲太(左) 矢野 大地(右)

高知県を拠点に、土産品の企画・開発・製造・販売を一気通貫で手がける株式会社はりま家(創業約120年)。同社は2026年1月、香川県高松市に明治10年(1877年)創業の銘菓メーカー・株式会社宗家くつわ堂を譲り受け、グループ会社として迎え入れた。創業100年を超える老舗企業同士が一つのチームとなったこのM&Aは、単なる事業承継にとどまらず、両社が積み上げてきた歴史と信頼を次の時代へつなぐ、壮大な挑戦でもある。「変わらないために、変わり続ける」という理念のもと、150年の伝統をいかに現代の市場へ届けるか。代表取締役社長 千頭 一弘氏に、M&Aの戦略的背景から今後のビジョンまでを聞いた。

「商品を売る会社ではなく、売れるようにする会社」──120年が磨いたプロデュースの哲学

まず、株式会社はりま家の歩みと、貴社ならではの強みについて教えてください。

株式会社はりま家 代表取締役社長 千頭 一弘 氏
株式会社はりま家 代表取締役社長 千頭 一弘 氏

弊社も宗家くつわ堂さんと同様に、創業から約120年になる古い会社です。もともとは明治時代にはりまや橋のほど近くで雑貨を始めたのがルーツで、戦時中の空襲で全てが焼け、移転を余儀なくされました。その際、祖父が「これからは土産物屋をやる」と言い出したのですが、当時は"土産物屋"という言葉自体が世の中に存在していなかったほどで、そこからのスタートでした。

その後、父の代で「これほど小さな店ではいずれ立ち行かなくなる」と考え、職人を招いてオリジナル商品を開発しました。それが評判を呼び、空港や駅から「卸してほしい」という声がかかったのが卸業の始まりです。私が入社した頃はちょうど商品の転換期で、民芸品の売れ行きが鈍ってきたタイミングでした。そこから雑貨を経て食品へと分野を広げ、自社工場を持たずに企画・開発を外部製造と組み合わせながら事業を拡張していくなかで、企画・開発から製造・販売までを一気通貫で手がける現在の体制が自然と出来上がってきました。

弊社の特徴を一言で表すならば、「商品を売る会社ではなく、売れるようにする会社」です。商品の特徴、ターゲット層、価格帯を起点に、どのラインの商品として仕上げるかを設計し、パッケージやデザインの雰囲気にまで一貫性を持たせていく。そのブランドを核に、マーケット自体を引き上げていくのが弊社の戦略です。

ブランドをプロデュースする上で、最も大切にしていることは何でしょうか。

難しい問いですが、まずは商品の特性を深く理解することです。「この商品はどの層に向けたものか」「どの価格帯に位置するのか」という前提をしっかり定めた上で、どのラインの商品として仕上げるかを決める。それはパッケージのデザインや雰囲気にまで直結しますから、そこに一貫性を持たせることを非常に大切にしています。ブランドとして市場に立つためには、見た目の統一感こそが最初の入り口になると考えています。

株式会社はりま家 本社看板
株式会社はりま家 本社看板
株式会社はりま家 本社外観
株式会社はりま家 本社外観

150年の価値を、現代の言葉へ。「翻訳」という発想が生んだM&Aの必然

宗家くつわ堂さんへの第一印象と、グループに迎えようと決めた理由をお聞かせください。

宗家くつわ堂の印象について語る千頭氏
宗家くつわ堂の印象について語る千頭氏

宗家くつわ堂さんの商品や売り場は以前から目にしていましたので、会社のことはある程度知っていました。ただ、経営陣や社員の方々と直接お会いしたことはありませんでした。商品と売り場を見ていた段階で「真面目で実直な会社なのだろう」という印象を持ちまして、最終的にもそのイメージは大きく変わりませんでした。悪い印象を持ったことは一度もありません。

宗家くつわ堂さんは来年でちょうど創業150年を迎えます。素材へのこだわりや手焼きの製法、長年にわたって培ってきた伝統は、全く変えてはいけないものだと捉えています。スタッフの方々がそれをきちんと継承できる体制を整えていくことも、弊社の大切な役割です。

「変わらないために、変わり続ける」──この言葉に込めた意味とは?

はりま家が今回のグループ化にあたって発表した事業承継のお知らせの中に、「伝統あるブランドが『変わらない』ために、時代に合わせて『変わり続ける』」という一文を掲げました。この言葉には、私たちの根本的な考え方が込められています。

両社の良いところをしっかり持ち寄ることが大前提です。宗家くつわ堂さんの価値が今下がっているかといえば、決してそうではありません。ただ、時代が急激に変わり、類似商品も増えたなかで、かつての価値の表現が現代の文脈に十分届いていない側面があると感じています。

一般的なユーザーからの評価のピークは、おそらく20〜30年前ではないでしょうか。その頃にあった価値は今も変わらず本物ですが、届け方が時代に追いついていない。弊社の役割は、昔の価値を今の言葉と感覚に"翻訳"し、さらに磨きをかけて伝えることだと捉えています。簡単に言えば翻訳ツールです。それが両社にとっての「持続可能な経営」の意味合いだと考えています。

「一般道から高速道路へ」──圧倒的スピードと新ブランド戦略で描く、成長の青写真

両社が一つになることで生まれるシナジーと、具体的な事業展開を教えてください。

株式会社はりま家が運営する大型複合施設「海のテラス」(高知県高知市・桂浜公園)
株式会社はりま家が運営する大型複合施設「海のテラス」(高知県高知市・桂浜公園)

短期的には、既存商品群の精緻な見直しから着手します。量目・価格・デザインの再設計と、それに連動した関連新商品の開発です。いきなり大きく方向性を変えるようなことはせず、伝統の延長線上に新しさを加えていくイメージです。具体的には現在5種類ほどの新商品を同時進行しており、秋頃の市場投入を見込んでいます。また、これまで手薄だった対面販路にも手を入れ、安定的な売上の確保を目指していきます。

4月17日より売り場に並ぶくつわ堂商品
4月17日より売り場に並ぶくつわ堂商品
(桂浜SHIP’S MARKET内)

中期的にはブランド戦略の再構築に踏み込みます。ちょうどトヨタがレクサスというブランドを立ち上げたように、宗家くつわ堂という本体を活かしながら、全く異なるコンセプトの新ブランドを創設する構想がすでに固まっています。現行の香川県中心の販路から、大都市圏を主戦場に据えて西日本から東日本へと展開し、当初はAmazonをはじめとするECを重点的に攻めていきます。統一デザインについては、日本トップクラスのパッケージクリエイターに依頼して制作を進めており、まもなく試作第一弾が上がってくる段階です。

組織づくりや人材育成において、特に力を入れていきたいことはありますか。

今後の組織づくりについて語る千頭氏
今後の組織づくりについて語る千頭氏

「イズムの共有」が最優先課題です。細かなノウハウよりも、どの方向に向かっているのかというベクトルを全員で揃えることが先決だと考えています。従業員の方々との個人面談も実施しましたが、会社への愛着と自社製品への誇りが非常に高いことに安心しました。年齢に関わらず、皆さん宗家くつわ堂の瓦せんべいが好きで、自社のことを大切に思っている。決して楽な環境ではないなかでずっと働き続けてくれている方々は、本当に大事にしなければなりません。

一方で、現場への変化の浸透という面ではいかがでしたか。

売上を伸ばすための方策に対する反応はまだ薄い部分があります。そこにスパイスを加えていく必要があると感じています。実際、ある営業スタッフが「新商品を作ってほしい」と話してくれたので、「では2週間で作ろう」と答えました。保守的な組織では「新商品できますよ、やりましょう」と言っても最初からネガティブな反応が来ると成功確率が下がります。ですから、スライドとダミーサンプルを全て用意した上で主要メンバーに直接プレゼンしたところ、「やりましょう」という雰囲気になりまして、初めて成功の確率が高いと確信できました。

「高速道路に乗り換える」──千頭代表が語る長期経営の道筋とは

「高速道路」という言葉の真意について笑顔で語る千頭氏
「高速道路」という言葉の真意について笑顔で語る千頭氏

田村社長との対話の中で、「これからは高速道路に乗り換える」という言葉を使いました。これは「猛スピードで突っ走れ」という意味では全くありません。150年の歴史をさらに200年・300年へとつなぐ長い旅のなかで、一般道から高速道路へと走路のステージを変えようという話です。高速道路に乗ってしまえば、ニュートラルな状態でも安定して走れる。そこに至るまでには少しエネルギーが必要ですが、それが筋肉質経営への転換に相当します。そのプロセスを一緒に頑張りましょう、というメッセージです。

「納得感こそが最後の決め手」──数字では測れない価値を見極め、共に歩む覚悟を持つ

今回、仲介を担当したストライクへの率直な評価と、ディール期間中のエピソードをお聞かせください。

弊社に対して、常に両方の立場に立って話を進めてくれていると感じていました。それが一番大事なことだと思います。どちらか一方に偏って「とにかく成立させたい」という姿勢では、肝心な部分が見過ごされてしまいますから。

M&Aは条件や数字だけで決まるものではありません。特に今回のように150年の歴史を持つ会社を引き継ぐ場合、見えない部分の擦り合わせが非常に重要です。その点でストライクは、双方の「納得感」を丁寧に形成しながら進めてくれたと感じています。焦らず、フェアに伴走してくれる存在があることで、こちらも安心して判断に集中できました。ディール期間中に精神的に負荷がかかる場面が若干ありましたが、それは仲介に起因するものではなく、M&Aというプロセスそのものの難しさによるものです。信頼できる仲介会社が間に入ってくれていたからこそ、最後まで落ち着いて進められたとも言えます。

最後に、M&Aを検討されている経営者の方へ、ご自身の経験を踏まえたメッセージをお願いします。

2026年1月成約式の写真
2026年1月成約式の写真
左から 千頭氏、株式会社宗家くつわ堂 代表取締役社長 田村 照夫 氏・取締役会長 田村 光博 氏

条件や価格はもちろん大事です。ただ、最終的な判断基準は「納得感」だと思っています。財務数値や売上・利益といった見えるものは当然確認します。でもそれ以外に、社長をはじめとした経営陣や社員の人柄・文化・仕事観といった数値に表れない部分を、自分が心から納得して受け入れられるかどうかが決定的に重要だと感じています。

M&Aは「会社を買って終わり」ではなく、「これから一緒になる」行為です。現在の従業員の方々や経営陣ともきちんとお付き合いをしていく覚悟が必要になります。最後は自問自答です。買ってお互いが幸せになれるか。それを問い続けて「やれる」と思えるなら、踏み出すべきでしょう。

では改めて、これから共に歩んでいく宗家くつわ堂の従業員の皆様へ向けて、メッセージをいただけますか。

伝統を継承している会社はそれなりの重みがあります。新しく立ち上げるよりも、そこにあるものを引き継ぐ方がずっと難しい。「変えるもの」を探すのは簡単ですが、「変えないもの」を見極めることこそが本当に難しいのです。ですから、言葉尻ではなく真意を汲みながら、慎重かつ着実に伴走していきたいと思っています。最終的には、「どこにお勤めですか」と聞かれて「宗家くつわ堂です」と答えた時に、「歴史があって、伸びている良い会社ですね」と言ってもらえる。社員が誇れる会社にすることが、今の私の一番の思いです。

M&Aアドバイザーより一言

ストライク雑賀 憲太

株式会社ストライク 四国営業部 雑賀 憲太

はりま家様は高知・四国を中心に土産物商社の枠を超えて桂浜公園の「海のテラス」を運営される等、非常に企画力の高い企業様です。
これから宗家くつわ堂様が培われた歴史を守りながら新たなステージへ両社は入っていくかと思います。
宗家くつわ堂様が全国区の和菓子メーカーへ成長されていくことを楽しみにしております。
両社のさらなるご発展を心より祈念いたします。

M&Aアドバイザーより一言

ストライク矢野 大地

株式会社ストライク 四国営業部 矢野 大地

はりま家様は創業120年以上の老舗土産品販売する会社様で、商品開発や販売などのプロデュース力に強みを持つ会社で、今回、グループに迎え入れられた宗家くつわ堂様が初めてのM&Aとなりました。
千頭社長からはご案内させていただいた当初から成約するまで一貫して、伝統あるブランドを評価していただけた事が宗家くつわ堂様にとっても「任せたい」と言われていた事が印象に残っています。
今後もM&Aは成長戦略の一つとして考えられており、事業発展に貢献できるよう精一杯努めてまいります。

公開日:2026年8月4日

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