INTERVIEW

想いを繋ぐバトン
オンリーワン技術が織りなすTakeda Worksと櫻製作所の未来

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株式会社櫻製作所 代表取締役社長 井上 正基氏、Takeda Works株式会社 元代表のご子女 町田 優利奈氏、ストライク山田博照、ストライク中村亘

株式会社櫻製作所 代表取締役社長 井上 正基氏
Takeda Works株式会社 元代表のご子女 町田 優利奈氏

創業以来、国産初のロータリージョイントを生み出し、独自の技術を磨き上げてきたTakeda Works株式会社(大阪府門真市)。伝統と想いを受け継ぐオーナーのご子女 町田氏は、父の急逝後、会社の存続と発展という重責を担うことになった。そして譲渡先として出会ったのが、熱交換器など食品・化学メーカー向け産業機械のシステムエンジニアリングを行う株式会社櫻製作所(大阪市淀川区)だ。両社の技術融合による新たな価値創造を目指し、実現したM&A。中小企業の成長モデルとなる、未来志向の経営統合の軌跡について、櫻製作所代表取締役社長の井上正基氏とTakeda Works前代表のご子女 町田氏に話を伺った。

Takeda Works株式会社 × 株式会社櫻製作所
ご成約インタビュー動画

オンリーワン技術で世界に挑む

事業内容と強みについてお聞かせください。

町田 優利奈氏
町田 優利奈氏

町田:Takeda Worksの前身となる初代創業者が昭和23年、ちょうど父が生まれた年に国産第1号となるロータリージョイント、圧力流体を扱う産業機械に欠かせない回転継手を考案しました。 初代代表である父がその伝統技術を受け継ぎ、時代やニーズに合わせて進化させていきました。それは他社では成し得なかった独自の技術です。そんな伝統ある高い技術力と進化を遂げた高い品質が強みで す。また、父は生前、その高い技術力を活用し、脱炭素社会の実現と地球環境改善に向けて、有機廃棄物を肥料や燃料に資源化するドラム回転式装置を開発しました。無念にも父の命が尽きたことで事業展開は叶いませんでしたが、その志は今に受け継がれています。

井上:株式会社櫻製作所は大阪で創業して78年になる会社で、化学・食品関係のオリジナル機械を製造しています。特に熱交換器系の製品に強みがあり、チョコレートやキャンディ、化粧品クリームなど、粘度のあるものを温度コントロールしながら混ぜる機械においては、日本で、そして世界でもオンリーワンの技術を有しています。

譲渡を決意されたきっかけと経緯についてお聞かせください。

町田:M&Aを検討したきっかけは、父である初代代表が亡くなり、株式を相続したことです。父が築き上げたTakeda Worksを、父の遺志を受け継ぎ、存続させ、さらに発展させていくことが、私に課せられた使命だと感じ、M&Aを決意しました。当初は、突然のことで不安もありましたが、ストライクさんは初めて私の思いに真摯に耳を傾け、寄り添ってくださり、株主としての意向を尊重しながら進めてくださいました。

M&Aを検討されたきっかけについて教えてください。

井上 正基氏
井上 正基氏

井上:私が(櫻製作所の)社長に就任して11年になりますが、就任当初は年商5億円の債務超過の会社でした。再建を進める中で、自社にないものをスピード感を持ってM&Aでグループに加えていきたいと考えるようになりました。5年前には別の会社を譲受しようとしましたが、頓挫。その経験から学び、2年前に建設機器のレンタル会社を譲受しました。その会社は現在、年商1億円から3億円へと成長しています。今回、ストライクの山田さんからTakeda Worksさんのご紹介を受け、当社とのシナジーを感じ、M&Aを検討することにしました。

「父のバトンを信頼して渡せる」お相手を探して

譲渡先のお相手に求める条件について教えてください。

株式会社櫻製作所 代表取締役社長 井上 正基氏、Takeda Works株式会社 元代表のご子女 町田 優利奈氏
井上 正基氏(左) 町田 優利奈氏(右)

町田:一番は、Takeda Worksの発展という父の願いが叶うことでした。父から受け継いだバトンを繋ぐという思いでM&Aを進めていたので、父の思いがこもったバトンを心から信頼してお渡しできる相手を求めていました。

トップ面談での印象はいかがでしたか?

町田:櫻製作所の井上社長に初めてお会いしたのは成約式の時でした。気さくで柔和な雰囲気でありながら、夢や野望、自信、決断力、行動力を兼ね備えた、まさに戦国武将のような力強さを感じました。こんな素晴らしい方にバトンを渡せるんだと思い、誇らしい気持ちになりました。

井上:町田様は、しっかりと先代の意思を受け継いでおられ、その思いを面談の際に伺いました。我々としてはそれを守り、成長戦略の中で伸ばしていきたいという思いを強くしました。

Takeda Works様の技術力をどのように評価されていましたか?

井上:日本では群を抜いた技術力をお持ちです。無菌充填には欠かせない技術だと認識しており、当社も以前からTakeda Worksさんの製品を使っていましたが、他社にはない技術だったため、ある意味、使わざるを得ない状況でした。

どのようなシナジーを見込んで譲受を決断されましたか?

井上:Takeda Worksさんの製品を使用した経験があるため、技術的なことはよく知っていました。また、当社のライバル企業であるドイツの熱交換器メーカーが、ロータリージョイントを標準装備した製品を持っていることも知っていました。Takeda Worksさんと一緒になることで、ロータリージョイントの技術を取り込むことができれば、両社にとってプラスになると考えました。また、当社の顧客は化学・食品系が多く、Takeda Worksさんの顧客とほぼ重複しているため、営業面でのシナジーも期待できると考えました。

譲渡の決め手は何でしたか?

町田:候補先の選定は、豊富な実績と経験をお持ちの山田さん、中村さんに全面的にお任せすることができました。おかげさまで、Takeda Worksの技術と櫻製製作所様の技術がどのように融合し、どのようなシナジーを生み出すのか、経営素人の私が頭を悩ませる必要はありませんでした。全幅の信頼を寄せるお二方が、私の意向に沿って選定してくださったお相手なら間違いないと確信していましたので、譲渡の最終決断にあたっては、心から信頼してバトンを繋げられる方かどうかという自分の信念一点に注力することができました。

譲渡されてから感じる変化はありますか?

町田:従業員の皆さんがいきいきと活力にあふれた様子を知る機会もありましたし、「居場所を作ってくださってありがとう」という感謝の声も届きました。井上社長でなければ、櫻製作所さんでなければこんなにも素晴らしい未来は訪れていなかったと思います。この度のM&Aを通じて幸せを感じる方が多かったですし、今後もその幸せの輪はどんどん広がっていくと思います。

具体的な協業内容や今後の展望について教えてください。

井上:まずは、Takeda Worksさんが持っている無菌用のロータリージョイントから派生するような新製品を開発したいと考えています。当社の営業が顧客にTakeda WorksさんのロータリージョイントをPRする際に、新製品のニーズを掘り起こし、当社の技術陣がそれを製品化することで、Takeda Worksさんとしての新しい製品群が生まれると考えています。また、営業面では、当社の営業力を活用して、Takeda Worksさんの製品を拡販していきたいと考えています。

今後、Takeda Works様の技術をどのように発展させていきたいですか?

井上:町田さんのお父様が開発されたロータリーキルン(金属、セラミックスなど粉体物質を、独自の攪拌機構と高温熱源を用いて焼成処理する炉)を復活させたいと考えています。当社の技術陣も興味を示しており、製品化に向けて動いています。また、Takeda Worksさんの社員には、当社の製造工程や技術開発を見学してもらい、組織として動くことを学んでもらっています。

成長戦略におけるM&Aについてどのようにお考えですか?

井上:技術的なシナジーと販売戦略上のシナジーが見込める会社であれば、M&Aは有効な手段だと考えています。事業承継でお困りの会社があれば、当社のグループに入っていただき、シナジーを持ちながら成長していくことを支援したいと考えています。将来的にはグループで上場を目指しており、Takeda Worksさんの事業を守りながら、従業員の雇用も守り、成長戦略を描いていきたいと考えています。

ストライクの担当者やサービスについて教えてください。

株式会社櫻製作所 代表取締役社長 井上 正基氏、Takeda Works株式会社 元代表のご子女 町田 優利奈氏
井上 正基氏(中央左) 町田 優利奈氏(中央右) ストライク 山田博照(右) 中村亘(左)

町田:私の思いに真摯に向き合ってくださり、最高の未来を拓いてくださいました。アドバイザーの山田さんと中村さんには、感謝してもしきれません。

今後M&Aを検討される方にメッセージをお願いします。

町田:自分の信念に従い、後悔のない選択をしてください。今後も私が経験したように、心から喜びを感じ、最高の未来が拓けるようなM&Aの実現を願っております。

井上:日本の企業の99%を占める中小企業では、事業承継が大きな課題となっています。高度経済成長期に社長になった方々の多くは70歳、80歳となり、後継者不在の問題を抱えています。「キラリと光る」技術を持つ企業も多く、日本経済を支えるためにも、M&Aによる事業承継の推進が急務です。当社の取引先でも同様の課題が増えており、手遅れになる前の早めの対策が重要だと考えています。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(山田 博照・コンサルティング本部 部長談)

ストライク山田 博照

今回の案件は、経営陣と株主である町田様の想いの方向性の違いから、なかなか前に進まない状況にありました。町田様が最後までストライクを信じてくれたことに加えて、井上社長が「責任をもってTakeda Worksの事業と想いを引き受ける」と覚悟をもっていただけたことが成約の大きなカギとなりました。結果としては譲渡企業社長、従業員の誰一人退職することなく、無事成約に至りました。このM&Aにより今後、両社が一丸となって更なる成長を遂げていかれることを心より願っています。

2025年6月公開

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