ご成約インタビュー No.132
INTERVIEW
老舗あんこ店が見据える未来とはー?
岩村製餡工場が「食生活♥♥ロピア」を運営するOICグループ入りを決断した理由
- #後継者不在
- #成長戦略
- #地方創生
- #老舗
- #外食・食品関係

岩村製餡工場工場顧問 岩村 嘉也氏
大正10年の創業以来、福島県会津若松市で着実にその名を刻んできた株式会社岩村製餡工場(本社・福島県会津若松市)。選び抜かれた素材と、伝統の製法、そして何よりもあんこへの情熱を胸に、美味しいあんこを追求してきた老舗あんこメーカーです。
近年、原材料費の高騰や後継者不足という、中小企業共通の課題に直面していました。そんな中、同社は食品スーパー「食生活♥♥ロピア」を運営するOICグループと手を組むことを決意しました。長年培ってきた確かな味と技術を、大手グループの傘下でどのように発展させていくのか。岩村製餡工場顧問の岩村嘉也氏に、M&Aの経緯と今後の展望について伺いました。
岩村製餡工場
ご成約インタビュー動画
素材と製法にこだわる、会津若松の老舗あんこ店
御社の事業概要と強みについてお聞かせください。

弊社の強みは、原料の選定から製造開発、最終的なお菓子まで、すべて自社で一貫して行える点です。素材の味を生かすため、甘さを控えめにし、小豆本来の風味を引き出すことを追求しています。糖度を極力抑え、量をたくさん食べても飽きのこない、美味しいあんこを目指しています。
大正10年の創業以来、「小豆」にこだわる


創業当時は、原料の確保が非常に困難だったと聞いています。また、小豆をあんこにするには水も重要ですが、昔は設備も十分でなかったため、苦労も多かったようです。この辺りは川のそばということもあり、水質が非常に良い地域です。先代から受け継いだ技術と、新しい機械設備を融合させ、お客様の要望に応じたあんこを作ることが、今の時代に求められていると感じています。
経費高騰、後継者問題も深刻に
経営上の課題についてお聞かせください。

近年、経費が高騰しています。原料である農産物は天候に左右されやすく、価格も安定しません。量と価格が安定しない上に経費が上がると、中小零細企業にとっては非常に厳しい状況です。美味しいと評価していただいても、価格が高すぎると敬遠されてしまうため、そのバランスを取るのが難しいです。譲渡を検討したきっかけは、後継者問題です。せっかく設備も人も育っているので、ここで途絶えさせてしまうのはもったいないと考えました。そこで、東邦銀行さんに相談したところ、M&Aという選択肢があることを知りました。
老舗あんこ屋の挑戦を支えた地域金融機関との絆
事業承継を検討する中で、私は長年取引のある東邦銀行と東邦コンサルティングパートナーズに相談しました。地域経済に精通した両社は、私たち岩村製餡工場の状況を丁寧に理解してくださり、M&Aという選択肢を提案してくださいました。さらに、M&A仲介会社であるストライクをご紹介いただき、専門的な知見やノウハウを通じて、M&Aを全面的にサポートしていただきました。
振り返ってみると、東邦銀行と東邦コンサルティングパートナーズのサポートがなければ、今回のM&Aは実現しなかったと感じています。地域金融機関は地元企業のことをよく理解しており、事業承継に伴う様々な課題を一緒に乗り越えてくれました。
これから事業承継を検討する経営者の方々には、信頼できる地域金融機関を見つけ、自社の状況を率直に伝えた上で、M&Aに関する相談をされることを強くおすすめしたいです。
OICグループのような大手に入ることに、どのような印象をお持ちですか。
最初は現実味がありませんでした。ただ、OICグループには、パティシエ鎧塚俊彦さんの菓子店や、全然違う業種の企業も参加していることを知り、大量生産・安売りだけを求めているのではないのだと感じました。新しいことに挑戦している姿勢も、弊社の考えと合致すると思いました。
譲渡の一番の決め手は何でしたか。

OICグループのスタッフの方々の、やる気やモチベーションです。勢いのある若い会社で、取締役の方も若い方が多く、そのような人たちと、大手のノウハウを取り入れられたら、すごいことになるのではないかと思いました。グループに参加することで、変な駆け引きがなくなり、ざっくばらんに話ができるようになると思います。価格や品質など、お互いに意見を言いやすくなり、より良いものが作れるようになると思います。
大正からの伝統を未来へ。“岩村製餡のあんこ”が世界へ羽ばたく日も!
これから、どのように事業を発展させていきたいですか。

今後は、お菓子まで作って、美味しいものをロピアさんで販売してもらい、評価を得られるようにしたいです。そうすれば、リピーターも増えてくると思います。OICグループからは、海外展開の話も出ていますが、まずはOICグループとどこまでできるのか、要望に応えられるのか、足元を固めることが先決です。
M&A成功の秘訣はありますか

最初の相談相手が重要です。誰と組むか、どのような相手と組むかが重要です。M&Aを考えているのであれば、専門家と一緒に、組織を見直す必要があると思います。チャンスがあれば、検討した方が良いと思います。早めの決断が重要です。良いチャンスがあるのなら、しっかりと検討してみるべきです。
特にストライクの担当者清野さんには、親身に相談に乗っていただき感謝しています。明確なアドバイスというよりも、普段の会話の中で気づきを与えてくれる、そんなプロフェッショナルな姿勢に感銘を受けました。
OICグループが語る、岩村製餡工場との協業とM&A戦略

OICグループ 取締役 経営戦略本部長 浜野 仁志氏
食の総合流通業を展開する株式会社OICグループ(本社・神奈川県川崎市)が岩村製餡工場をグループに迎え入れました。日本の食文化を国内外に広げたいというOICグループが、老舗あんこ店に託す未来とは何かー。OICグループの浜野仁志氏に、M&Aの背景や今後の展望について伺いました。
食の総合流通業という強み
OICグループの事業内容と強みについて教えてください。

OICグループの強みは、食の総合流通業というビジネスモデルです。一次産業からメーカー、卸、小売、外食まで、食に関するあらゆる事業を繋げています。これにより、本来出会うことのなかった人々が協力し、新たな商品やサービスを生み出せています。
岩村製餡工場を譲り受けられたきっかけは何ですか。
日本の食文化を国内外に広げたいと考えており、あんこは和菓子の源流となるものなので、グループに入ってもらいたいと思いました。岩村製餡工場のあんこは低糖度で美味しく、工場も清潔に保たれており、品質が良い点も魅力でした。
文化を守り、共に成長する
岩村製餡工場が抱えていた課題についてはどのように認識していましたか。

M&Aを決断された背景には、後継者不足という課題がありました。OICグループでは年間10件以上のM&Aを行っており、その半数以上が後継者不足の企業です。グループに参画いただくことで、企業文化を守り、次世代に繋いでいくことができると考えています。
今後、岩村製餡工場と共にどのように発展していきたいですか。

まずは、OICグループの主力であるスーパーマーケット「ロピア」で販売できる商品を一緒に作り上げていきたいです。和菓子だけでなく、あんこを使った新たなスイーツも開発していきたいと考えています。将来的には、アジアにも展開し、現地の食文化を広げていきたいです。
OICグループのM&A戦略:食の総合力で世界へ
今後の展望についてお考えをお聞かせいただけますでしょうか?
OICグループは、農業から外食まで食に関するあらゆる事業を包括的に展開する強みを活かし、M&Aを積極的に推進。2031年度には100社体制を目指し、グループ全体の総合力を高めることで、日本経済の活性化に貢献することを目指しています。
M&Aにおいては、単なる企業価値の向上だけでなく、譲受企業の文化や技術を尊重し、グループ内のシナジーを最大限に引き出すことを重視。特に、地方に眠る優れた食文化や技術を持つ企業をグループに迎え入れ、後継者不足などの課題解決に貢献することで、地域経済の活性化にも寄与したいと考えています。
海外展開も視野に入れ、台湾でのスーパーマーケット事業を皮切りに、アジア市場への進出を加速。日本の食文化を広めるだけでなく、現地の食材と技術を組み合わせた新たな食の価値を創造し、世界の人々の食生活を豊かにすることを目指します。M&Aを通じて、食のプロ集団としての総合力を高め、世界中の人々に「美味しい」を届けることを目標としています。
M&Aを検討している経営者の方にメッセージはありますか。
M&Aはネガティブなイメージを持たれがちですが、成長を求める上で有効な手段です。OICグループでは、M&Aを通じて社員の幸せややりがいにも繋がるような、Win-Winの関係を築いていきたいと考えています。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(清野 遼太・法人戦略部 シニアアドバイザー談)

創業から100年を超える老舗製餡会社の岩村製餡工場様と、食の総合流通企業として成長著しいOICグループ様が、M&Aを通じて仲間になることで、今後どのような新しい商品が誕生するか、どのような展開・成長を実現していくか、それらを想像しとてもワクワクしながらお手伝いをさせて頂きました。
M&Aは「仲間づくり」であると弊社はミッションに掲げております。1社ではできなかったことが、2社が仲間になることでできるようになる、その仲間づくりをお手伝いすることが弊社の使命でもあります。
今回仲間になって頂いた両社の今後の益々の発展を祈念するとともに、両社がコラボして世に出るおいしい商品を口にできることを心待ちにしております。
また、本件は岩村製餡工場様のメインバンクである東邦銀行様と東邦コンサルティングパートナーズ様からのご紹介をきっかけにご縁を頂きました。長年メインバンクとして支えてこられたからこその岩村製餡工場様との信頼関係と、地方銀行様ならではのお客様との親密なコミュニケーションがあったからこそ、私も最後までお手伝いすることができました。この場をお借りして御礼申し上げます。
2025年8月公開
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