ご成約インタビュー No.140
INTERVIEW
バスケの熱で愛媛を一つに
サイボウズとの資本業務提携で描く「チームワークあふれるまち」の未来図
愛媛オレンジバイキングスが挑む地域活性化とBリーグ頂点への道
- #成長戦略
- #地方創生
- #戦略的M&A
- #娯楽・スポーツ

株式会社エヒメスポーツエンターテイメント 取締役副会長 河原 成紀氏
株式会社エヒメスポーツエンターテイメント 代表取締役社長 北野 順哉氏
愛媛県松山市を拠点とするプロバスケットボールチーム「愛媛オレンジバイキングス」を運営する株式会社エヒメスポーツエンターテイメントは、2025年6月25日、サイボウズ株式会社と資本業務提携契約を締結し、第三者割当増資によりサイボウズの子会社となることで合意した。地域密着型のスポーツチームとITの力を融合させ、バスケットボールを通じた地域活性化と組織力強化を目指す。今回のM&Aに至った経緯や今後の展望について、株式会社エヒメスポーツエンターテイメント取締役副会長の河原成紀氏と代表取締役社長の北野順哉氏に話を伺った。
河原副会長インタビュー
県民の誇りへ—バスケの力で地域を変える挑戦
これまでの歩みとM&Aを検討されたきっかけを教えてください

河原:株式会社エヒメスポーツエンターテイメントは、プロバスケットボールチーム愛媛オレンジバイキングスを運営しています。チームを立ち上げた2016年当初は、「そんなチームあるの?」という反応が多かったのですが、県民の皆さまや、スポンサー企業の方々、そして愛媛県や松山市をはじめ各市町村のご支援をいただき、県民の方々に広く認知されるようになりました。
Bリーグに参入し、しっかり活躍できるチームを作っていきたいと考えるようになりました。限られた予算では、スタッフのアイデアがあってもなかなか実現できないという課題があり、もっと多くのことを実現できる環境を整えたいという思いから、ストライク社にご相談させていただきました。
愛媛と東京をつなぐ「天啓」—
サイボウズとの出会い
サイボウズとの出会いについて教えてください

河原:サイボウズの青野社長は愛媛県今治市のご出身で、東京と愛媛をつないでくれる重要な存在だと前々から認識していました。青野社長からお声をかけていただいたことは非常に嬉しく、私たちにとってまさに「天啓」のような出来事でした。
何より、サイボウズの企業理念である「チームワークあふれる社会を創る」という考えが、私たちの目指す方向性と一致していたことが大きな決め手となりました。青野社長は「人を大切にし、地域を大切にする姿勢」を持たれており、その気持ちが私たちに伝わってきました。
また、サイボウズの中根弓佳執行役員がBリーグの理事も務めており、今後の経営に関わっていただけることも心強く感じました。中根さんが愛媛と東京の2拠点生活をしながら愛媛オレンジバイキングスに関わる時間を作ってくださることに感謝しています。
ITとバスケの融合—
「チームワークあふれるまち」への挑戦
サイボウズとのシナジーで何が変わりますか?
河原:これまでは限られた予算の中で優先順位をつけながら運営してきましたが、サイボウズと関わることで、今までできなかったことができるようになります。スタッフのアイデアを形にできる環境が整うことが一番大きなメリットです。
また、サイボウズとの提携によって、バスケットボールが愛媛県の根っこ、シンボルのような存在になることを期待しています。愛媛オレンジバイキングスが地域にとって一定のブランドや存在感を持ち、愛媛の地域に貢献できるコンテンツの一つになれると考えています。
「チームワークあふれるまち」を愛媛から—
サイボウズの新構想との連携
河原:サイボウズは2025年7月に「チームワークあふれるまちづくり室」を設立し、地域がITを活用して一つのチームとなり、情報共有や対話が促進され、主体的に社会課題が解決される「チームワークあふれるまち」の実現を目指しています。
プロスポーツチームは、その存在によって地域にコミュニティを形成し、地域を活性化、人々の誇りや一体感を育むなど、地域そのものをワンチームにする力があります。これはサイボウズが目指す方向性と親和性が高く、長期的な支援につながりました。




Bリーグ・ワンからBプレミアへ—新たな挑戦
2400人の壁を超えて—
Bリーグ・ワン正式参入への道筋
河原:サイボウズが関わることで、「Bリーグ・ワン」や「Bプレミア」を目指していく体制ができると思います。現在、平均入場者数は約1600人で、愛媛オレンジバイキングスはBリーグ・ワン参入へ仮ライセンスの発行を受けた状態です。正式ライセンス取得には、シーズン平均入場者数2400人以上をクリアする必要があります。この目標達成に向けて取り組んでいきます。
「アリーナを通したまちづくり」—
新アリーナ構想の真意
河原:新設アリーナは単にバスケットボールの試合をするための施設というだけでなく、「アリーナを通したまちづくり」という視点が重要です。例えば、アリーナができることで大規模なコンサートが開催され、県民の皆さんの生活の選択肢が広がります。
松山市は5000人以上収容の新アリーナ建設の議論を進めていますが、青野社長も「建設費などが高騰する中で、建てればうまくいくという単純な話ではない。しっかり稼げる形にして地域の資産になるよう住民など関係者と議論したい」と話しています。私たちはそのようなアリーナを通したまちづくりに関わり、アリーナの稼働率向上にも貢献していきたいです。


愛媛の誇りを創る—
バスケットボールの可能性
県民の誇りとなるチームを目指して
河原:県民にとって「必要なチーム」、そして県外にいる愛媛出身の方々が「愛媛にはオレンジバイキングスがあるんだよ」と誇りに思えるようなチームにしていきたいです。
現在、スクール事業などの取り組みがまだ十分ではない状態です。バスケットボールをやりたい人がバスケットをできる環境を整え、バスケットボールを理解してもらう環境を整備していくことが重要だと考えています。これを県内全域で実現できるよう取り組んでいきます。
最終的には、愛媛オレンジバイキングスがインフルエンサーとなり、友情と新しさを届けるようなチームになって、愛媛県民みんなで夢のようなことをやってみたいです。
北野社長インタビュー
「理念の共鳴」がもたらす新たなバスケットボールビジネスの可能性
クラブの資本力強化を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

北野:私が2023年9月に正式に社長として就任する前から、社外取締役として関わっていた時点で、資本力の強化が課題だと感じていました。実際にクラブに入り込んだ時に、その必要性をより強く認識し、M&Aも含めた資本戦略を当初から検討をしていました。
ただ、クラブの資本力を強化するためには外部資本の導入が不可欠である一方で、全く愛媛に馴染みのない企業が参画されると、「愛媛のクラブなのに愛媛のクラブではない」という印象を地域の方々が持ってしまう懸念がありました。その点でも地域との親和性が高いサイボウズとの連携は理想的でした。
サイボウズとの出会いは運命的だったのでしょうか?
北野:率直に言うと、考えられる中でベストな相手だと思いました。サイボウズは創業の地が愛媛であり、愛媛県内の方々にも全国的にも知名度が高く、親近感を持ってもらいやすい企業です。
実は青野社長とは以前から面識がありました。愛媛で開催されたG20サミット関連のイベントで、働き方改革や多様性についてのディスカッションを一緒にしたことがあります。そのため、「お久しぶりです」という自然な形で再会できました。
青野社長との対話で印象に残ったビジョンは何ですか?
北野:青野社長との対話の中で印象的だったのは、単にクラブの経営だけでなく、クラブというコンテンツをこの街「愛媛」でどう活かすかという視点を持っておられたことです。「アリーナを活かした街にしていきたい」といった高い視座を持っておられることに非常に感銘を受けました。
デジタル革命がもたらすスポーツビジネスの変革
サイボウズとの提携によるDX推進で、具体的にどのような変化を期待していますか?
北野:大きく二つあります。一つ目は、個人プレーからチームプレーへの組織転換です。二つ目はDXの推進です。スポーツビジネスの現場では「誰かが手を動かした方が早い」という発想になりがちですが、DXを取り入れることで生産性を向上させ、マンパワーからチームプレーへの転換を図ることができます。
例えば、地方の小規模クラブでは、試合運営時にフロントスタッフ全員が体育館に行き、テープを張ったり椅子を並べたりしています。DXによって業務効率化を図ることで、各スタッフが本来の専門性を発揮できる環境を作りたいと考えています。
四国初のトップリーグチームを目指す壮大な挑戦
「四国初のトップリーグチーム」という目標に込めた思いは?
北野:実は四国には、野球、サッカー、バレーボール、ラグビーなど、どの競技でもトップカテゴリーで戦っているプロスポーツクラブがありません。我々が四国初のトップリーグで戦うプロチームになることで、他のスポーツにも「我々もできるのではないか」と思ってもらえるような存在になりたいです。

24-25シーズン キャプテン 俊野 佳彦選手



B2からBプレミアへの道筋をどのように描いていますか?
北野:短期的には、B2西地区でのプレーオフ進出を目指します。特に直近2年間の西地区最下位という結果を覆すことが最優先です。
中長期的には、Bリーグ・ワンの参入条件である平均来場者数2400人以上を達成することを目指しています。現在は1500人程度なので、しっかりとこの基準をクリアする努力をしていきます。そして最終的には、Bプレミアへの参入を目指しています。
新アリーナ構想についての現実的な見方を聞かせてください
北野:アリーナはバスケットボールのためだけではなく、地域に人の流れを作り、これまでになかったコンテンツやエンターテインメントを生み出す装置だと考えています。ただ、現在の我々には5000人、1万人規模のアリーナは持て余す状態です。まずは直近の目標である平均来場者数2000人以上をクリアし、もっと多くの人に応援してもらえる環境を作ることが先決です。
最後に、ストライクのサービスや担当者はいかがでしたか?
北野:ストライクさんはBリーグのオフィシャルパートナーでもあり、情報の共有が非常にスムーズでした。スポーツビジネスという特殊な業界について、基本的な説明から始める必要がなく、共通言語を持った上で我々の課題について話し合えたことが良かったです。
担当の合田さんは冷静にお話を進めてくださいました。四国という地域性を理解していることも我々にとって心強かったです。地域に根差したM&Aを進める上で、地域性を理解している担当者がいることは大きなアドバンテージだと感じました。
河原:ストライクの皆さんはマイルドで、いろいろと取り組んでいただきました。一番大きいのは、サイボウズと私たちを引き合わせていただき、未来的な形を作っていただいたことで、すごく感謝しています。今後も「ストライクさんに相談して良かった」と言えるような関係を続けていきたいです。
今回、愛媛オレンジバイキングス、エヒメスポーツエンターテイメントがストライク社と関わることで、未来志向的な展開を築くことができました。ストライク社は私たちの要望に応えるだけでなく、様々な選択肢を提示し、企業にとって発展的な形を作っていただける大切なパートナーだと思います。
M&Aを検討する経営者へのアドバイスをお願いします

北野:M&Aを検討されている企業には必ず何らかの経営課題があるはずです。それが企業価値の向上なのか、成長戦略なのか、シェアの拡大なのか、後継者問題なのかは様々ですが、どの企業も課題を抱えているという点では同じです。
そのような状況では、まず専門家に相談してみることをお勧めします。自分自身の考えを整理するためにも、一度相談することは非常に有効です。そうすることで、これまで思いつかなかった視点や解決策が見つかるかもしれません。それがM&Aという形になるかどうかは別として、会社が将来的に成長し、従業員が幸せになるための最善の道を見つけることが経営者の務めです。
河原:皆さんもぜひストライク社と関係を持って、事業を大きくしていただければと願っています。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(合田 良明・四国営業部 アドバイザー談)

この度は、四国の地域活性化につながる案件に携わることができ、大変光栄に思っております。エヒメスポーツエンターテイメント様が築いてこられた地元での確固たる基盤と、サイボウズ様が持つDXのノウハウが融合することで生まれるシナジーは、単なる企業価値の向上にとどまらず、地域貢献や人と人とのつながりを生むプラットフォームの構築という、より大きな価値創造につながることに誇りを感じております。
M&Aのプロセスにおいても、スピード感が求められる中、両社様の卓越したチームワークと、サイボウズのクラウドサービス「kintone(キントーン)」の効果的な活用により、まさにワンチームとしてスムーズに進行することができました。
今回の案件は、従来の後継者問題解決を目的としたM&Aとは異なり、企業の成長戦略実現を目的とした資本業務提携です。また、株式譲渡ではなく第三者割当増資というスキームを採用するなど、M&Aには実に多様な手法が存在します。
M&Aは企業が抱える様々な課題を解決する有効な選択肢の一つです。固定観念にとらわれることなく、まずはお気軽にご相談いただければと思います。
2025年9月公開
本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
是非お気軽にお問い合わせください。
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