INTERVIEW

京都市中央卸売市場、初の第三者承継。
75年の歴史を持つ老舗仲卸が描く「日本一」への新たな挑戦

株式会社丸北 北尾商店 代表取締役 上撫 直哉 氏、株式会社丸北 北尾商店 相談役 北尾 圭子 氏、株式会社YMFGキャピタル 取締役 藤本 孝 氏、株式会社YMFGキャピタル シニアマネージャー 光永 勇貴 氏、ストライク吉田、ストライク板東

株式会社丸北北尾商店 代表取締役 上撫 直哉 氏
株式会社丸北北尾商店 相談役 北尾 圭子 氏

株式会社丸北北尾商店は、歴史ある京都市中央卸売市場で75年にわたり青果仲卸業を営んできた。3代目社長の療養を機に、会社の未来と従業員の雇用を守るため、同社は事業承継を決断。白羽の矢が立ったのは、サーチファンドを活用し、異業種から経営者をめざす上撫直哉氏だった。市場設立以来初となる、業界未経験者による事業承継。伝統を重んじる京都の市場に新たな風を吹き込むべく、新社長の上撫氏と、その挑戦を温かく見守る相談役の北尾圭子氏に、承継の舞台裏と未来への展望を伺った。

株式会社丸北北尾商店
ご成約インタビュー動画

従業員の雇用を守るための決断。譲れない想いは「DNAの継承」

M&Aを検討されたのはどのような理由からでしょうか。

北尾 圭子 相談役(以下北尾):前社長である夫が体調を崩し、会社経営が困難になったのが直接のきっかけです。息子も事業を継がない意向でしたので、具体的な事業承継の話を進めることになりました。私自身は経理が主で現場経験がなく、夫の不在時に副社長として現場に出ましたが、勝手が分からず本当に大変でした。会社の存続と従業員の雇用を守るため、M&Aという決断に至りました。

京都市中央卸売市場の中にある店舗外観
京都市中央卸売市場の中にある店舗外観
店内にはこだわりの商品が並ぶ
店内にはこだわりの商品が並ぶ

交渉を進める上で、特にこだわった条件や、譲れないと考えた点はありましたか。

株式会社丸北北尾商店 相談役 北尾 圭子 氏
株式会社丸北北尾商店 相談役 北尾 圭子 氏

北尾:事業を譲渡すること自体に葛藤はありませんでしたが、承継後の会社のことが一番の心配でした。特に、この市場では前例の少ない第三者承継を従業員が受け入れてくれるか、不安でしたね。ですから、夫と相談し、3代にわたり築いてきた会社の「DNA」をしっかり残してほしいとお願いしました。地域に密着し、お客様との信頼関係を大切にしてきた文化を守りつつ、新しい力で会社を成長させてくれる方を求めていました。

未経験の世界へ飛び込む。社会インフラを支える仕事への魅力

丸北北尾商店様の事業承継を決めた理由について、お聞かせください。

株式会社丸北北尾商店 代表取締役 上撫 直哉 氏
株式会社丸北北尾商店 代表取締役 上撫 直哉 氏

上撫 直哉 代表取締役(以下、上撫):私はNTT西日本で約15年間、ITやデジタルの仕事をしてきました。一方、この仲卸という仕事は、人と人とのつながりが重要な世界です。全くの未経験の業界でしたが、人間関係の温もりがあり、生産者と消費者を繋ぐという、社会インフラを支える手触り感がありました。そんな環境の中、歴史ある会社の未来に貢献できることに大きな魅力を感じ、承継を決意しました。

トップ面談ではどのようなお話をされ、お互いのどのような部分に共感されましたか。

北尾:初めてお会いした時の印象は、とにかく「お若い!」ということでした。エネルギッシュで、お話も分かりやすく、強く印象に残りました。お会いするたびに、その誠実な人柄に惹かれていきました。努力してコミュニケーションを取るというより、天性の才能のようにナチュラルに人と接することができる方。まるで息子のように応援したくなる、そんな魅力を感じました。

上撫:私はオンラインでの面談が最初でしたが、画面越しにも伝わってくる北尾さんご夫妻の柔らかい雰囲気が印象的でした。特に3回目にお会いした際に、北尾前社長から「焦らず一つずつゆっくりやっていきなさい」という言葉をいただいたことは忘れられません。気負いがちな私の性格を見抜いてくださったその一言で、肩の力がすっと抜けました。その言葉は、今も私の心に深く刻まれています。

共に汗を流す仲間たちと新社長が築く信頼の輪

従業員の方々や市場の皆さんとの関係構築で、意識していることは何ですか。

株式会社丸北北尾商店 代表取締役 上撫 直哉 氏
入社当時の従業員の皆さんとの出会いを振り返る上撫社長

上撫:この市場は人間関係がすべて、と言っても過言ではありません。ですから、特別な工夫をするというより、人が好きだという気持ちを隠さずに、ありのままで皆さんと接することを心がけています。従業員の皆さんには、私が初めてここに来た日に、来月から社長になるということをお伝えしました。本当に不安でしたが、経緯と思いを正直にお話ししたところ、皆さんが拍手で迎えてくださったのです。番頭さんから「一緒にやっていきましょう」と声をかけていただき、涙が出そうになるほど嬉しかったのを覚えています。

承継後のサポート体制はいかがでしたか。

上撫:今回の承継は、YMFGキャピタルの藤本さん、光永さんなしには実現しませんでした。特に、承継後の「100日プラン」では、光永さんが週に3日、朝5時から一緒に事務所で仕事をしてくださっています。経営者は孤独だと言われますが、こうして壁打ち相手になってくれる存在がいることは、本当に心強いです。銀行出身の知見を活かして金融機関との交渉をサポートしてくださるなど、経営面でも大きな助けとなっています。

めざすは「日本一の仲卸」。DNAを継承し、新たな成長軌道を描く

今後の事業展開についてお聞かせください。

株式会社丸北北尾商店 代表取締役 上撫 直哉 氏
「丸北北尾商店の自慢の白菜です」と語る上撫社長

上撫:市場を取り巻く環境は決して楽観できません。だからこそ、伝統的な仲卸の仕事という根幹を大切にしながらも、その枠を超えていかなければならないと考えています。まずはお客様の元へ足を運び、ニーズを深く理解することから始めています。私が率先してその姿勢を見せることで、従業員の皆さんのポテンシャルを引き出し、周囲から「丸北は変わったな」と思っていただけるような変化を起こしていきたいです。社内では公言しているのですが、私の目標は「日本一の仲卸になる」ことです。守るべきDNAは大切に受け継ぎながら、より強く、しなやかな会社へと進化させていきます。

今後、M&Aを検討される経営者の方にメッセージをお願いします。

北尾:事業承継が無事に終わり、本当にほっとしています。今回、ストライクさんにお願いして本当に良かったと感じています。担当の板東さん・吉田さんがいつも親身に寄り添ってくださり、心温まる気持ちで最後まで進めることができました。若いエネルギーで会社を引っ張っていってくれる上撫社長の姿を見て、これからの未来が本当に楽しみです。これからも「おかんの目」で、温かく見守っていきたいですね。

上撫:事業承継は、会社の「第二創業」とも言える、次のステージへ進むための大きなきっかけです。外部の力が入ることで、これまで培ってきたものをアップデートし、新たな成長軌道を描くことができる。会社にとっても、従業員にとっても、素晴らしい機会になり得ると確信しています。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(吉田 里穂・株式会社ストライク コンサルティング部 アドバイザー談)

ストライク吉田 里穂

本件は、顧問会計事務所様からのご紹介をきっかけにご相談をいただきました。創業75年の歴史を持つ丸北北尾商店様の後継者不在という課題に対し、サーチファンドという取り組みを通じて新たな経営者への事業承継を実現できたことを大変光栄に思います。後継者の姿が目に見える形での承継は、オーナー様にとっても大きな安心につながるものです。YMFGキャピタル様とのご提携のもと、丸北北尾商店様が「日本一の仲卸業者」へ発展されることを心より祈念しております。

2026年5月公開

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