INTERVIEW

地方創生の新潮流「サーチファンド」とは?
人起点の事業承継で切り拓く、地域の未来

株式会社YMFGキャピタル 取締役 藤本 孝 氏、株式会社YMFGキャピタル シニアマネージャー 光永 勇貴 氏

株式会社YMFGキャピタル 取締役 藤本 孝 氏
株式会社YMFGキャピタル シニアマネージャー 光永 勇貴 氏

株式会社YMFGキャピタルは、日本国内で初めて「サーチファンド」を事業化したフロントランナーだ。後継者不在に悩む地方の中小企業と、経営者を志す優秀な人材をつなぐこの仕組みは、事業承継の新たな選択肢として注目を集めている。2019年の「YMFG Search ファンド」設立から実績を重ね、現在は全国を対象とする「地域未来共創Searchファンド」を展開。そのファンド規模は約55億円にまで拡大した。今回は、伝統ある京都の青果仲卸業・株式会社丸北北尾商店の事業承継を成功させた、株式会社YMFGキャピタルの取締役 藤本 孝氏とシニアマネージャー 光永 勇貴氏に、サーチファンドの強みと、人を中心とした事業承継の本質について話を伺った。

株式会社YMFGキャピタル
ご成約インタビュー動画

全国に広がる「人起点」の事業承継モデル

「地域未来共創Searchファンド」について、詳しく教えてください。

Searchファンドについて
Searchファンドについて
スキーム全体像
スキーム全体像

藤本 孝 取締役(以下、藤本):サーチファンドとは、まず「経営をしたい」という意欲のある方(サーチャー)に我々が投資をし、その方がご自身で承継したい企業を探す(サーチする)モデルです。従来の投資は、企業に投資してから適任の経営者を派遣する形が一般的でしたが、サーチファンドはその順番が逆で、「人起点」であることが新しい点です。
地方には後継者不在に悩む企業が数多く存在する一方で、都市部には経営に挑戦したい優秀な人材がいます。この両者を結びつけることで、企業の存続と成長を促し、ひいては地域活性化に貢献するのが我々のねらいです。
2019年に設立した「YMFG Search ファンド」は、山口フィナンシャルグループの主要エリアである山口・広島・福岡に限定した実証的な取り組みでしたが、6社の事業承継を実現することができました。この実績を踏まえ、後継者不在という全国共通の課題に応えるため、2022年からエリアを全国に拡大した「地域未来共創Searchファンド」を運営し、両ファンドでこれまでに13社(2026年2月末現在)の事業承継を実現しています。山口フィナンシャルグループだけでなく、全国の地方銀行や事業会社、中小企業基盤整備機構からもご出資いただき、ファンド規模も「YMFG Search ファンド」の10億円から約55億円へと大きく成長しました。

数年前と比較して「サーチャーを目指す個人の質」や「譲渡オーナーの認知度」にどのような変化を感じますか?

株式会社YMFGキャピタル 取締役 藤本 孝 氏
株式会社YMFGキャピタル 取締役 藤本 孝 氏

藤本:サーチャーを志す方の層は確実に広がっていると感じます。当初は、海外のMBAを取得した20代後半から30代前半の若手が中心でした。しかし最近では、大企業でキャリアを積んだ40代、50代の方が「これまでの経験を活かして社会に恩返しがしたい」と門を叩くケースも増えています。
一方で、譲渡を検討される企業オーナー様の認知度は、まだまだ課題があるのが実情です。「ファンド」という言葉に抵抗感を持たれる方も少なくありません。しかし、ストライクさんのようなM&A仲介会社と連携して丁寧にご提案することで、この手法が着実に広まっている実感があります。

地銀グループが推進する最大の強みとサーチャーに不可欠な資質

山口フィナンシャルグループがサーチファンドを推進する、最大の強みは何だとお考えですか。

藤本:地方に根差した金融機関として、「ヒト・モノ・カネ・情報」という経営資源を総合的に提供できる点が最大の強みです。特に、後継者不在に悩む企業様の情報や、株式取得時の資金調達、そしてファンドがEXIT(株式譲渡)する際の資金調達といった融資面で地方銀行がサポートできる可能性は、サーチャーにとって大きな安心材料となります。
また、我々は投資先に深く入り込み、地方銀行ならではの同じ目線でウェットなコミュニケーションを大切にしています。単なる資金提供者ではなく、共に汗を流す伴走者として寄り添う。この「情報」「資金」「伴走」の三位一体のサポートこそが、地方銀行がサーチファンドに取り組む意義であり、強みであると考えています。

多くの志願者の中で、最終的に投資を決める「サーチャーに不可欠な資質」とは何ですか?

藤本:最終的な決め手は「人柄」「覚悟」、そして「長期的にやり切る意思」に尽きると考えています。能力やスキルは前提ですが、それ以上に、中小企業の現場に溶け込み、従業員の皆様と丁寧に人間関係を築けるかどうかが重要です。
我々は面接だけで判断するのではなく、サーチャー候補の方が現職を続けながら企業訪問などに同行いただく「プレサーチャー」という段階を設けています。Web面談では見えない、ふとした会話や立ち居振る舞いにこそ、その人の本質が現れるものです。時には一緒に食事をするなどのコミュニケーションを通じて、その方が本当に現場で信頼される人物かを見極めています。

伝統と格式の京都で実現した「市場初の挑戦」

京都の伝統的な青果卸業に対し、なぜ上撫さんが最適だと判断されたのですか?

株式会社YMFGキャピタル シニアマネージャー 光永 勇貴 氏
株式会社YMFGキャピタル シニアマネージャー 光永 勇貴 氏

藤本:上撫さんは優秀であることに加え、その人柄とコミュニケーション能力が際立っていました。上撫さんが通っていた九州大学のMBAで説明会を行った際、ゼミの中心的な存在として、周囲から慕われている姿が印象的でした。市場という職場では、こうした「ベタな関係」を築ける力が不可欠です。関西出身という土地勘もプラスに働き、多様な関係者から支援されながらも、自身の信念を貫ける人物だと感じました。

光永 勇貴 シニアマネージャー(以下、光永):私が近くで見てきた中で感じる上撫さんの魅力は「誠実さ」です。ご紹介した他の企業のオーナー様からも、上撫さんの人柄は常に高く評価されていました。最終的な決め手は、丸北北尾商店の北尾会長と相談役が「この方なら経営を任せられる」とご判断されたことです。誰よりも会社のことを知るお二人の評価を、我々は最も尊重しました。
また、上撫さんは業界未経験でしたが、その熱意と姿勢が素晴らしかったです。投資が決まる前から業界研究を重ね、入社前にフォークリフトの免許を取得するなど、「現場で汗をかく」という覚悟を行動で示してくれました。

今回のM&Aにおいて、特に印象的だった場面や、成功の決め手となったと感じる点はありますか?

光永:トップ面談の段階から、相性の良さを感じていました。北尾会長は口数が多い方ではありませんが、質問には的確に答えてくださる。奥様である相談役とは野菜の話などで盛り上がり、初対面からまるで本当の親子のように意気投合していました。その様子を見て、直感的に「ここなら大丈夫だ」という確信がありました。
クロージング当日、買い手である上撫さんと売り手である奥様が一緒に仲良く帰っていく姿を見たときは、このM&Aが本当に成功したのだと実感しました。二人がまるで本当の親子のようになった、忘れられない光景です。

経営者に寄り添う「ウェットな伴走」

経営者は孤独になりがちですが、就任後にどのようなサポートを行っていますか?

株式会社YMFGキャピタル 取締役 藤本 孝 氏、株式会社YMFGキャピタル シニアマネージャー 光永 勇貴 氏
サーチャーへのサポート体制について語るお二人

光永:基本はサーチャーである上撫さんが主体的に経営を行いますが、我々は補助的な役割でウェットな伴走を続けています。例えば、金融機関との手続きのサポートや、従業員の皆様と馴染めているかの確認など、間に入ってコミュニケーションを円滑にする役割を担っています。私も週に3回ほど山口から京都の現場に通い、経営が軌道に乗るまでサポートしています。

藤本:就任後の従業員の皆様の不安を減らすため、事後のサポートも重要です。我々が現場に入ることで、従業員の皆様がサーチャー本人には直接言いにくい本音を、第三者である我々に話してくれることがあります。そうした現場の空気や違和感の兆しを早期に察知し、摩擦が大きくなる前に対処することも我々の大切な役割です。

事業承継に挑もうとする次世代のサーチャーに向けて、一番伝えたい心得は何ですか?

藤本:まずは「サーチファンド」という選択肢があることを知っていただきたいです。経営者をめざす方にとっては、とても有力な選択肢だと確信しています。そして、挑戦すると決めたなら、「何でも自分でやる」という気概を持ってほしいです。中小企業の経営は、決して思い通りにいくことばかりではありません。経営戦略を考えることも重要ではありますが、営業も仕入れも現場に出て、すべて自分でやり、従業員の皆様と一緒に汗をかく。その覚悟や思いがあれば、どんな困難も乗り越えられるはずです。

ストライクのサービスや担当者はいかがでしたか?印象的なエピソードなどあれば、教えてください。

藤本:率直に大変素晴らしいと感じました。何より、お客様である企業様から絶大な信頼を得ていることを強く感じました。丸北北尾商店様も、担当の吉田さんのことを非常に頼りにされており、その強固な関係性があったからこそ、本件がスムーズに進んだのだと思います。また、我々の対応についても企業様の目線で率直な意見をくださったことがありがたかったですし、今回の承継につながったと思います。

光永:一般的なM&A仲介会社は、成約がゴールという印象がありましたが、ストライクの吉田さんは全く違いました。最初の候補先を選ぶ段階から「この会社にはどういう相手が良いのか」という視点で、売り手と買い手の双方に寄り添った提案をしてくださいました。
最初のトップ面談はオンラインだったのですが、お互いに緊張してしまい、こちらの熱意が十分に伝わっていないと感じました。その場で私が「もう一度提案させてほしい」と申し出ると、吉田さんが間髪入れずに「では、次はいつにしますか?」とアポイントを入れてくださったんです。そのスピード感のおかげで熱量が冷めることなく、次の提案につなげることができました。あの「間髪入れない一言」がなければ、このご縁はなかったかもしれません。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(吉田 里穂・株式会社ストライク コンサルティング部 アドバイザー談)

ストライク吉田 里穂

本件は、顧問会計事務所様からのご紹介をきっかけにご相談をいただきました。創業75年の歴史を持つ丸北北尾商店様の後継者不在という課題に対し、サーチファンドという取り組みを通じて新たな経営者への事業承継を実現できたことを大変光栄に思います。後継者の姿が目に見える形での承継は、オーナー様にとっても大きな安心につながるものです。YMFGキャピタル様とのご提携のもと、丸北北尾商店様が「日本一の仲卸業者」へ発展されることを心より祈念しております。

2026年5月公開

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