ご成約インタビュー No.161
INTERVIEW
株式会社カネコ・コーポレーション 代表取締役会長 金子 博一 氏
創業から一世紀に手が届こうとする株式会社カネコ・コーポレーション(本社所在地:東京都北区)は、工作機械を扱う専門商社として、時代の変化に合わせて姿を変えてきた。中古販売や卸売から直販へ。個人商店から組織へ。その歩みを支えてきたのは、商品そのものでは差がつきにくい業界で、最後に選ばれる理由となる「人」の力だった。親族承継という道も真剣に探りながら、10年後、20年後の会社の姿を見据えてM&Aを決断した金子 博一会長。その背景には、会社を残したいという切実で前向きな思いがあった。
工作機械商社として磨いてきた「人間力」
まず、貴社の事業内容と、これまで大切にしてきた強みについて教えてください。
当社は、工作機械の代理店販売を行う国内専門の機械商社です。この業界は、お客様がどこの販売店から買ってもよい仕組みですから、制度上「この会社でなければならない」という強みは、実はあまりありません。極端に言えば、どこからでも買える。そのなかで選んでいただくには、会社としての質、営業一人ひとりの質、つまり「個の力」で勝負するしかないのです。私は、それを人間力と言い換えてもいいと考えています。そこが当社の原点であり、いまも変わらない強みです。
祖父が「金子静一商店」という個人商店として始めたのが、当社の出発点です。その後、小さな工場を持ち、戦後は中古機械の販売や修理も手がけてきました。平成のバブル崩壊の頃に私が入社し、中古販売も卸売もやめて、エンドユーザーへの直販一本に切り替えました。いまのお客様の6割は、その転換以降に築いてきたご縁です。会社の形は変わっても、人で信頼を積み重ねるという本質は変わっていません。
創業100年と事業承継、そのはざまで
M&Aはいつ頃から考え始め、どのような理由で検討されたのでしょうか。
選択肢として意識し始めたのは4、5年前です。ただ、もっと前から、自分がいなくても回る会社をつくろうとは考えていました。自分に子どもがいないこともあり、いずれ誰か別の方が社長を担うのであれば、私がいなくても困らない会社にしておく必要がある。その思いで、権限委譲を徐々に進めてきました。コロナ禍で私が出社を控えていたときも、会社は問題なく回っていたので、その形は既にできていたのだと感じました。
一方で、当初は親族承継を目指していたのです。従兄弟にも加わってもらい、持株会もつくって、金子一族皆で100周年を迎えようと考えていました。ただ、数年取り組むうちに、4代目、5代目、その先まで同族でつないでいくことの難しさが見えてきました。会社を守るために始めた挑戦だったからこそ、その限界もまた、冷静に見えてきたのだと思います。10年後、20年後を考えたとき、会社を残すにはプロの経営者に託すという道が、最も現実的だと判断しました。
検討を始めてから、実際に動き出すまでに葛藤はありましたか。
譲受先である株式会社事業承継機構さんのお話を聞いて、最初は半信半疑で、本当にそんな話があるのか、という気持ちはありました。ただ、事業承継機構の皆さんが当社を非常に尊重してくださり、上から目線が一切なかったのです。「ぜひ一緒にやりたい」「金子さんとご一緒したい」という想いが、言葉だけでなく態度からも伝わってきました。そうなると、不安よりも期待の方が大きくなります。気持ちはむしろ一直線でした。早く一緒に走り出してみたい、そんな感覚だったと思います。
トップ面談で芽生えた信頼、交渉で守りたかったもの
トップ面談ではどのようなお話をされ、どのような点に共感されましたか。
最初の面談で、事業承継機構の吉川社長が自ら会社の考え方を説明してくださいました。そのなかで強く心に残ったのが、「金子さんの会社を100年、200年残すのが私たちの使命です」「いずれは御社のプロパー社員に代表になってもらいたい」という言葉です。
M&Aでは、親会社から社長が派遣されることが一般的です。そのため、その話には非常に大きなインパクトがありました。帰宅してからインターネットでも調べましたし、実績も確認しましたが、言っていることとやっていることに一貫性がありました。何より、まっすぐな方だと感じたのです。言葉以上に、その姿勢に信頼を覚えました。
従業員との対話、そして次の100年へのシナジー
従業員の方にはどのタイミングで伝え、どのような反応がありましたか。
今回は持株会の解散がクロージングの条件だったため、通常より早く、クロージングの約1か月前に社員へ説明しました。全員を集めて話したのですが、かなり驚いていました。ただ、その後に辞めた社員は一人もいません。当社はもともと定着率が高く、10年以上退職者が出ていない状況でした。日々の積み重ねがあったからこそ、突然の話でも受け止めてもらえたのではないかと思っています。
今後の事業展開への期待と、M&Aを検討する経営者へのメッセージをお聞かせください。
工作機械を売るという大きな柱は、これからも変わらないと思います。そのうえで、グループ内でのシナジーや新たな商材の広がりは、今後の可能性として大いにあるでしょう。ただ、最後はやはり人間力です。そこをさらに伸ばしていくことが、一番大切だと考えています。
新社長も非常に速いスピードで当社を理解してくれています。私が細かく関わらなくても、社長と社内メンバーでしっかり会社を動かしてくれていて、外から来たという違和感はほとんどありません。もう完全に「金子の人」だと感じるほどです。
これからM&Aを考える経営者の方には、一つの現実的な選択肢として持ってよいのではないかとお伝えしたいです。同族で100年、150年と会社をつなぐのは、簡単なことではありません。私自身、親族承継を本気で考え、実際に動いたからこそ、その難しさがよくわかります。会社をどう残すかを真剣に考えたとき、M&Aは十分に前向きな方法になり得ると感じています。
ストライクとの出会いが導いた決断
ストライクを選んだ理由と、担当者・サービスの印象を教えてください。
最初のきっかけは、ストライクから連絡をいただいたことでした。その後、親族承継を検討した時期もありましたが、担当の鵜沼さんは関係を絶やさず、東京出張のたびに顔を出してくれました。だからこそ、あらためてM&Aを考えようとなったとき、「相談先があるから大丈夫だ」と自然に思えました。
進めるうえでは、とにかくレスポンスの速さが印象的でした。メールに残しにくい相談は電話でしていましたが、その対応も非常に丁寧で、折り返しも早かったです。こちらに合わせるだけではなく、ストライクとしての意見もきちんと伝えてくれました。誠実でしたね。
もう一人の担当の田辺さんは、皆が少し煮詰まっているところで要点をすっと整理してくれるのです。同じ資料を見ていても、一番先にポイントを見つける印象がありました。よく勉強されていて、良いコンビだと感じました。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(鵜沼 大仁・株式会社ストライク 事業法人部 シニアアドバイザー談)
カネコ・コーポレーション様は工作機械の専門商社で、ご創業から100年近くも製造業界への貢献をされてきた日本有数の企業様です。その信頼と実績は、確固たる基盤確立の背景となっており、金子会長の経営手腕のもと、従業員様がしっかりと責務を果たされながら会社全体が同じベクトルを持たれていると強く感じる会社です。金子会長とは4年以上のお付き合いを頂く中で、会社の将来、従業員様の将来、お取引様の将来を真剣にご相談させて頂き、会社のステークホルダーにとって何が最良の選択肢なのかを一緒に考えた結果、M&Aで仲間づくりをする選択をされました。会社を残し、従業員様を守りつつもステップアップの機会を作り、会社を発展させていくパートナーとして事業承継機構様をご紹介させて頂き、金子会長のご意向と事業承継機構様の経営理念が合致した最適な資本提携をご支援させて頂けたものと考えております。今後のご両社の益々のご発展を心より祈念申し上げます。
M&Aアドバイザーより一言(田辺 陽一・株式会社ストライク 事業法人部 アドバイザー談)
事業承継機構様は、企業の永続を目的とされ、歴史や文化、そして従業員の皆様を深く尊重する姿勢を貫いてくださいました。カネコ・コーポレーション様にとっても、この出会いは単なる経営権の移転ではなく、100年企業の未来と社員の成長を託す最高のパートナーシップになったと感じています。両社のさらなるご発展を心より祈念いたします。
2026年6月公開
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