INTERVIEW

「自分一人では限界だった」――長崎の警備会社、事業承継の葛藤とM&A決断の裏側。投資会社との協業で目指す「長崎No.1」への新たな挑戦

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リゾルトパートナーズ株式会社 代表取締役 大石 翔太 氏 (中央右)、リゾルトパートナーズ株式会社 ヴァイスプレジデント 藤井 輝 氏 (中央左)、株式会社スターライト 代表取締役 城 竜次 氏(中央)

リゾルトパートナーズ株式会社 代表取締役 大石 翔太 氏
リゾルトパートナーズ株式会社 ヴァイスプレジデント 藤井 輝 氏
株式会社スターライト 代表取締役 城 竜次 氏

長崎市を拠点に交通誘導警備などを手掛ける株式会社スターライトは2025年、独立系の投資会社リゾルトパートナーズ株式会社へ株式を譲渡した。先代である父から会社を継いだ城 竜次社長は、事業の成長が頭打ちになる中で「自分一人の限界」を感じ、会社の未来を託すM&Aを決断。一方、買い手となったリゾルトパートナーズは、スターライトが持つ社会的意義と成長の「余白」に可能性を見出し、ハンズオンでの支援に乗り出した。事業承継の悩みの先にあった前向きな決断の背景、そして未来への展望について、スターライトの城 竜次社長、リゾルトパートナーズの大石 翔太代表取締役、藤井 輝ヴァイスプレジデントの3名にお話を伺った。

父から継いだ会社。順調な成長の先に見えた「自分一人の限界」

まずは、スターライト社の事業内容と、城社長が会社を継がれるまでの経緯についてお聞かせください。

株式会社スターライト 代表取締役 城 竜次 氏
株式会社スターライト 代表取締役 城 竜次 氏

城:株式会社スターライトは、2002年に先代である父が設立した会社で、現在は長崎市を拠点に交通誘導警備を主な事業としています。私自身はもともと神奈川県で建設業の仕事をしていましたが、2010年頃に父から声がかかり、スターライトに入社しました。入社当時は、警備業のほかに清掃業なども手掛けていましたが、徐々に交通誘導警備に事業を集中させていきました。当初は他社からの応援業務が中心でしたが、地道に実績を重ね、今では大手の建設会社様から直接お仕事を任せていただけるまでに成長し、地域からの信頼をいただける企業になったと感じています。

お父様から会社を引き継がれた後、特にご苦労された点はありますか。

城:2013年に父が療養生活に入り、実質的に私が経営を引き継ぐことになりました。そして2015年に正式に代表取締役に就任したのですが、当時私はまだ33歳でした。従業員の多くは父と同じ世代で、人生経験も業界経験も私よりずっと豊富な方ばかりです。当初は、経験の差からくる考え方の違いや、コミュニケーションの難しさを感じることもありました。
しかし、日々彼らと接する中で、変に構えるのではなく、自分の父親や祖父と話すような気持ちで、本音で向き合うことを心がけました。腹を割って話すことで、少しずつ信頼関係が生まれてきたように感じます。入社当初に反発していた従業員が、今も辞めずに会社を支えてくれているのは、そうした積み重ねの結果だと信じています。一体感を高めるまでには5年ほどかかりましたが、今では良い関係を築けていると考えています。

今回、M&Aによる株式譲渡を決断されたきっかけや背景についてお聞かせいただけますでしょうか。

城:代表に就任してから5年ほどは順調に事業を拡大できたのですが、その後5年間は、安定した顧客基盤を維持することはできても、そこから先の成長が描けず、業績が横ばいの状態が続いていました。「自分一人ではこれ以上の成長は難しいのではないか」。そうした限界を感じる中で、会社をより良い方向に導くためには、外部の第三者の視点や知見を取り入れ、新たな可能性を見出す必要があるのではないかと考え始めました。それが、M&Aという選択肢に興味を持ったきっかけです。

M&Aの検討を始めてから、実際に動き出すまでにどのような葛藤がありましたか。

城:会社の成長のためにはM&Aが最善の道だという思いは固まっていたので、進むべき方向性について大きな葛藤はありませんでした。ただその一方で、譲渡後の自分自身の生活がどうなるのか、という点については正直、不安がなかったわけではありません。しかし、何よりも会社の成長を第一に考え、前に進むことを決意しました。

「長崎でNo.1に」――経営者の熱意と、支援できる「余白」が投資の決め手

リゾルトパートナーズ社は、どのような投資戦略をお持ちなのでしょうか。

リゾルトパートナーズ株式会社 代表取締役 大石 翔太 氏
リゾルトパートナーズ株式会社 代表取締役 大石 翔太 氏

大石:私たちは2023年に設立した会社で、コンサルティング事業と投資事業の二軸で事業を展開しています。私たちの理念は「中堅・中小企業のお役に立ちたい」というもので、自己資金を元手に、スモール・マイクロキャップと呼ばれる規模の企業様を対象に、ハンズオンで深く関わっていく投資を特徴としています。単に資金を提供するだけでなく、私たちの知見や経験を活かして、企業様のさらなる成長をご支援することを目指しています。

今回、長崎の警備会社であるスターライト社へ投資を決めた理由についてお聞かせください。

大石:まず、警備業という事業が、社会にとってなくてはならないインフラであり、非常に社会的意義の大きい仕事だと考えているからです。そうした重要な事業の承継と、さらなる発展に貢献したいという思いが強くありました。そして何より、城社長との面談が大きかったです。面談の中で、城社長が「この会社を長崎でナンバーワンにしたいんです」と熱く語られていたのが非常に印象的でした。その素晴らしいビジョンに感銘を受け、ぜひ私たちもその実現のお手伝いをしたいと心から思いました。また、私たちが持つ経営管理やDX、マーケティングといった知見を活かせる「余白」がスターライト社にはあると感じました。私たちの支援によって、この会社はもっと成長できるという確信が持てたことも、投資を決めた大きな理由です。

警備業界は人手不足が深刻な課題とされています。その中で、スターライト社のどのような点に将来性を感じられましたか。

大石:警備業界全体が成長市場であることに加え、現在の長崎経済は新幹線の開通に伴う再開発などで非常に活気があり、マーケットとして大きな可能性があると見ています。確かに人手不足は深刻な課題です。しかし、私たちは今回のM&Aを通じて、スターライト社を「人が集まる魅力的な会社」へと変えていきたいと考えています。待遇改善はもちろん、働きがいのある組織文化を醸成することで、人手不足という逆風の中でも成長できる会社にしていける。そのポテンシャルを強く感じています。

「この人たちとなら」――信頼関係が築けたトップ面談

皆様、トップ面談ではどのようなお話をされ、お互いのどのような部分に共感されましたか。

城:会社の現状や今後の成長戦略についてお話しする中で、私たちが抱えている課題や悩みに対して、リゾルトパートナーズのお二人が深く共感してくださったのが印象的でした。特に、自分たちだけではどうにもならないと半ば諦めていた人材採用についても、「戦略的に解決できる」というお話を聞き、「この人たちとなら、会社を成長させていける」と直感的に思えました。

大石:私も城社長にお会いして、その誠実で実直な人柄に強く惹かれました。会社も素晴らしいですが、何よりも「この経営者の方とぜひご一緒したい」と感じたのが最初の印象です。その印象は今も全く変わっていません。

M&Aの交渉を進める上で、特にこだわった条件や、譲れないと考えた点はありましたか。

リゾルトパートナーズ株式会社 ヴァイスプレジデント 藤井 輝 氏
リゾルトパートナーズ株式会社 ヴァイスプレジデント 藤井 輝 氏

城:私がこだわったのは、従業員の雇用の維持です。彼らが安心して働き続けられる環境を維持していただくこと。それが唯一の、そして最大の要望でした。個人的な条件については、特にありません。

藤井:私たちも「人」に関する部分には最もこだわりました。城社長の今後の関わり方や引継ぎ期間、そして社内のキーパーソンとなる方が今後も活躍し続けてくれる体制づくりなどです。幸い、その点については城社長と私たちの考えが完全に一致しており、非常にスムーズに話を進めることができました。

M&Aは新たな成長の始まり。多拠点展開とDXで描く未来

リゾルトパートナーズ社と組むことで、スターライト社が今後どのように変わっていくことを期待されていますか。

城:トップ面談の時からお話していたのですが、長崎県内での多拠点展開を実現したいと考えています。これまで、そのノウハウも知識もなく、どう進めればいいか分かりませんでした。今後は、リゾルトパートナーズ社の力を借りながら、どの地域に、どのようなタイミングで進出すべきか、戦略的に判断していきたいです。また、私たちは数字に基づいた経営が弱い部分でした。これからはKPI管理などを通じて経営の「見える化」を進め、的確な意思決定ができる組織になりたい。警備業は人が増えなければ成長できません。拠点を増やし、人材を確保し、会社を大きく成長させていきたいです。

具体的にどのような支援を計画されていますか。

藤井:まずは、組織基盤の強化です。これまで外部に委託されていた財務を私たちのグループ会社で担うことで、月次決算の早期化や管理体制の精度向上を図ります。また、KPIを設定し、経営状況を「見える化」することで、次の打ち手を議論できる体制を構築しています。人材採用については、新たな採用媒体の活用や、社員紹介制度の導入など、私たちのコンサルティング事業で培ったノウハウを活かして、多角的に支援していきます。さらに、スターライト社を軸に、九州圏内を中心とした他の警備会社とのM&A(ロールアップ)も視野に入れ、グループ全体で成長していく戦略を描いています。

今回のM&Aを通じて、長崎の地域経済にどのように貢献していきたいとお考えでしょうか。

城:警備業は、地域の安全・安心を支えるエッセンシャルワーカーです。私たちが提供する警備の品質を高め続けることが、そのまま地域社会への貢献に繋がると信じています。また、事業を拡大し、新たな雇用を創出することでも、地域経済の発展に貢献していきたいです。

M&Aは終わりではなく、前向きな未来へのスタートライン

今回のM&Aを経験されて、どのようなことを感じましたか。同じように事業承継や会社の将来に悩む経営者の方へ、メッセージをお願いします。

城:M&Aというと、どこか遠い世界の話のように感じていましたが、実際に経験してみて、これは会社の未来にとって非常に前向きな選択肢なのだと実感しました。私のように、会社の成長が鈍化して悩んでいる経営者の方は少なくないと思います。そうした時に、第三者の新しい視点や知識を取り入れることで、自分一人では見えなかった道が開けることがあります。M&Aは、会社を前に進めるための力強いエンジンになり得ます。廃業などを考える前に、ぜひ一つの選択肢として検討してみてほしいです。

最後に、今回のM&Aをサポートしたストライクの担当者はいかがでしたでしょうか。

城:本当に親身になってサポートしていただきました。夜遅くまで毎日のように連絡を取り合い、こちらの不安に寄り添ってくれました。お二人のおかげで、最後まで安心して進めることができました。

大石:私も、担当のお二人だったからこそ、これだけスムーズに、そして今も良好な関係を築けているのだと確信しています。両社に寄り添いながら、常に迅速かつ誠実に対応していただきました。改めて感謝をお伝えしたいです。

本日はありがとうございました。肩書や所属部署は取材当時のものです

M&Aアドバイザーより一言(松岡 祐介・事業法人部 アドバイザー談)

ストライク松岡 祐介

本件は、お父様から承継された後も順調に成長されてきたスターライト様が、更なる成長のためにリゾルトパートナーズ様との資本提携を選択されたという、成長戦略型のM&Aでした。
リゾルトパートナーズ様はコンサル事業もされている投資会社で、スターライト様の更なる成長のための戦略立案から実行までしっかり伴走できる点と、大石様と藤井様の寄り添う姿勢やスピーディーな意思決定と対応が決め手となりました。
ご成約後もスピーディーにあらゆる施策が動いている様子がうかがえ、今後の展開を非常に楽しみにしております。
引き続き両社の更なる発展・成長を願っております。

M&Aアドバイザーより一言(池永 海・事業法人部 アドバイザー談)

ストライク池永 海

スターライト様は、長崎で地域に最も信頼される警備会社を目指してこられましたが、近年は人材確保の難しさや従業員の高齢化など、警備業特有の課題に直面していました。
加えて、不動産事業も営んでおり事業の選択と集中も検討されている中で、今後の成長を託せる最適なパートナーを模索された結果、リゾルトパートナーズ様への譲渡をご決断されました。
警備業は地域の安全を守る社会インフラでありながら、人材不足やDX化対応が急務と存じています。本件はその課題を乗り越え、従業員の安心とサービス品質をさらに高める大きな一歩となりました。

2025年10月公開

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