ご成約インタビュー No.144
INTERVIEW
中小企業の力を結集 地方初・1000億円企業グループへの挑戦
みどりホールディングスが描く「中小企業連合」の未来図
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株式会社みどりホールディングス 代表取締役専務 杉川 綾氏
広島を拠点に、ビルメンテナンスから不動産管理、ホテル運営、介護事業まで幅広く手がける株式会社みどりホールディングス。グループ23社を束ね、総合不動産サービス企業として成長を続ける同社が、2025年7月、横浜の建築防水資材メーカー・株式会社山装をグループへ迎え入れた。「個ではなく集合体で成長する」という独自のM&A戦略で、地方から全国へと事業領域を拡大する同社の挑戦について、杉川綾専務に話を聞いた。
ビルメンテナンスから総合不動産サービスへ 60年の歴史が育んだ多角化経営
みどりホールディングスとはどのような企業グループですか?
私たちは「ひと・まち・みらい創造グループ」として、不動産に関わるあらゆるサービスを提供しています。1963年に祖父が創業した株式会社第一ビルサービスから始まり、現在はグループ23社で年商約350億円規模まで成長しました。
当初は清掃業務が中心でしたが、事業領域は実に幅広く、ビルメンテナンス、プロパティマネジメント、建設工事、ホテル運営、介護事業、給食事業、人材派遣まで手がけています。例えば、広島の商業施設の運営や、道の駅、公営住宅の指定管理なども行っています。
事業の多角化はどのように進められたのですか?
転機は2000年頃でした。バブル崩壊後、ビルメンテナンス市場が成熟期を迎える中、私たちは、マンション管理組合の管理代行、内装工事、不動産仲介など、「不動産」を軸に事業領域を広げていきました。新たな成長の道を模索した結果です。
特に大きかったのは、プロパティマネジメント事業への参入です。当時、海外ファンドが日本の不動産を買い始め、新たな管理ニーズが生まれました。リクルートビルマネジメント(現ザイマックス)とのご縁で社員を1年間出向させてノウハウを習得し、今ではザイマックスやケネディクスの中国エリアの不動産の管理を任されるまでになりました。
ビルメンテナンスという事業の特性も多角化に有利でした。電気工事、空調工事、管工事など、様々な専門業者に発注する立場にあるため、どの業種とも親和性が高く、グループ化することで一気通貫のサービスが提供できるようになったのです。
「なんとなく」では失敗する M&Aを成長戦略の柱に据えた理由
本格的なM&A戦略を始めたきっかけは?
4、5年前、若手社員を集めて「未来プロジェクト」を立ち上げました。創業70期(2033年)に向けた中期経営計画を策定する中で、「1000億円グループ売上」という目標を掲げたんです。
日本の市場では、中小企業が一社で売上を10倍にするような爆発的成長は望めません。でも、個ではなく集合体として成長することは可能です。そこで2022年頃にM&A専門部署を設置し、本格的に取り組み始めました。
M&Aで最も重視されるポイントは何ですか?
「人」です。特に経営者の人物評価は最重要です。私たちは各グループ会社を「一国一城の主」として尊重し、基本的に現経営陣に経営を任せます。だからこそ、信頼できる経営者かどうかの見極めが重要なんです。
デューデリジェンスの過程で、前日と当日で説明が変わったり、数値修正の理由を即答できなかったりする経営者とは取引しません。「何のために、誰のために長年続けた会社を譲渡するのか」という芯がない経営者とは、一緒になってもお互いにとって不幸になるだけです。
防水資材メーカー・山装買収の狙い 関東進出と西日本販路拡大の相互補完
数ある企業の中から、なぜ山装を選ばれたのですか?
まず大前提として、私たちは建築不動産に関わる事業者に限定してM&Aを検討しています。山装さんは、我々の業界でもなじみのある建築防水資材の製造・販売を手がける専門企業で、「ダモ脱気筒」や「ダモ角型鉛改修ドレン」など業界内で高いシェアを誇る製品を持っています。
当初は、私たちも広島を拠点にしているため、中四国・西日本エリアでの展開を考えていましたが、一都三県の市場の重要性を再認識しました。将来的に日本の市場は「一都三県とそれ以外」という構図になる可能性もある。関東に拠点を持つ必要性を感じていたところ、横浜に本社を置く山装さんとご縁がありました。
山装とのシナジーをどう創出しますか?
山装さんは東日本では強い販路を持っていますが、西日本はまだ弱い。一方、我々は九州に総合建設業者の大和建設株式会社(福岡)や株式会社木村建設(熊本)といったグループ会社があり、中四国にも強固な基盤があります。これらを通じて山装さんの優れた製品を西日本の業者に紹介し、販路拡大を支援できます。
また、山装さんはファブレス体制で、海外の安い大量生産に頼らず、品質にこだわった製品づくりをされています。「ダモ脱気筒」だけで15億円の売上があるのは、その品質への信頼の証です。「思いやりをかたちにし、人と建物の調和・快適な住環境づくりに貢献する」という経営理念も、我々のグループ理念と合致しています。
山田社長の印象はいかがでしたか?
真面目でブレない方です。傾いた会社を引き継ぎ、覚悟を決めて立て直された。自分の利益ではなく、会社と社員のことを第一に考えている。財務も綺麗に整理されていて、「この人なら任せられる」と確信しました。
実際、山田社長も「みどりグループは会社の風土を大切にしてくれる」と評価してくださいました。我々はミッション・ビジョンの共有と数字管理は徹底しますが、各社の社風は壊さない。過度な統制は離職を招くだけですから。
地方から大手に挑む「中小企業連合」 M&Aで実現する新たな地方創生
御社は、「M&Aを通じた地方創生」を企業として掲げていらっしゃいます。お考えを聞かせてください。
地方の優良企業が廃業すると、その地域の経済力が落ちてしまいます。例えば地方の10億円規模の建設会社で、部長クラスが年収600〜800万円もらっていたとして、会社が潰れたら同じ条件での再就職はほぼ不可能です。
我々ができる範囲は限られていますが、ご縁のある会社を存続させることで、地域の雇用と購買力を守ることができます。実際、2024年5月には「自己資金ゼロで経営者に!」というサーチファンド型のM&Aプログラムも始動しました。これも新たな地方創生の形だと考えています。
今後のM&A戦略について教えてください。
山装さんを起点に、関東でもビルメンテナンス、建築、土木、不動産系の会社をグループインし、一つのグループを形成していく構想があります。既にある防水工事会社からも打診がありました。
最終的に目指すグループ像とは?
中小企業のグループを作り、地方から大手とガチンコで戦える存在になることです。将来的には、大手のナショナル企業やインターナショナル企業が西日本で事業をする際に、「みどりグループは無視できない存在」と言われるようになりたい。
我々のグループクレドは「私たちは、「誇り」・「つながり」を大切に、新たな価値創造に「挑戦」し、「サスティナブル」な未来に向けて「進化」します。」です。この理念のもと、個々の企業の強みを活かしながら、集合体として成長していく。それが、地方の中小企業が勝ち残るための手立ての一つと信じています。
ストライクの担当者についてはいかがでしたか?
高木さんと森下さんには、買い手・売り手双方への質問を的確に伝達し、バランスよく段取りを進めていただきました。
M&A仲介会社の担当者の品質は良くも悪くも様々ですが、今回のストライクさんは違いました。数値修正があれば、その根拠や発想を自分の言葉で即答できる。担当者次第で案件の品質が左右されますから、これは非常に重要です。
特に印象的だった点はありますか?
スピード感ですね。2月にスタートして7月にクロージング、わずか6か月での成約は、広島と横浜という物理的な距離を考えると最短水準だと思います。
何より「一瞬たりとも不安にさせない」という姿勢が素晴らしかった。レスポンスも早く、中立的な立場で双方に寄り添ってくれる、信頼できるアドバイザーでした。
最後に、M&Aを検討している経営者へのメッセージをお願いします。
大切なのは、譲渡企業も譲受企業も「何のためにM&Aをするのか」という目的を明確にすることです。M&Aは成約してからが本当のスタート。目的が明確でないと、統合後の相乗効果も期待できません。
また、情報開示の透明性も重要だと考えています。譲渡側は財務情報を全て開示するのに、譲受側の情報が限定的なのは、私は不自然に感じてしまいます。それでは、お互いの理解が深まりません。我々は買い手側のIM(インフォメーション・メモランダム)も作成し、オープンな情報共有を心がけています。
特に譲渡を検討される経営者の方は、多くの場合、初めての経験になると思います。じっくりと情報収集をして、譲受企業についても理解を深めることをお勧めします。ご自身の会社と相手企業が一緒になることで、どんな未来が描けるのか。そのビジョンを共有することが、良いM&Aにつながると信じています。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(高木 俊元・法人戦略部 シニアアドバイザー談)

みどりホールディングス様は、グループ年商1,000億円という目標を掲げ、成長を続けていらっしゃる企業群です。
これまでに豊富なM&A実績をお持ちのため、私どもも安心して山装様にご紹介することができました。
豊富なご経験から、譲渡企業様の立場を深くご理解されており、提携後の齟齬が生じないよう、多くの情報を率先してご開示いただくなど、きめ細やかなご配慮をいただきました。
M&Aアドバイザーより一言(森下 優輝・法人戦略部 アドバイザー談)

みどりホールディングス様は、「笑顔あふれる『ひと』『まち』づくりに貢献する」を企業理念に掲げ、地域社会の持続的な発展に寄与されている企業グループです。
ビルメンテナンスを祖業とされ、現在では電気工事、建築工事、戸建住宅など幅広い事業を展開し、24社のグループ会社で構成されています。
本件を進めるにあたり、杉川専務をはじめM&A推進部の皆様には、常に迅速かつ丁寧にご対応いただきました。また、本社見学や、過去にM&Aを経験された経営者の方々との貴重な対話の機会も設けていただきましたこと、心より感謝申し上げます。
今回のM&Aは、山装様の更なる事業拡大のみならず、みどりホールディングス様にとっては関東進出の足掛かりとなる、大変意義深い取り組みとなりました。
今後もM&Aを通じて、みどりホールディングス様の一層のご発展に貢献できれば幸いです。
2025年10月公開
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